お金

「サブスクに負けた」スカパーの現在地。加入者激減でも業績が“悪くならない”理由

「伸び続ける宇宙事業」に活路が?

スカパーJSATホールディングスの2020年3月期から24年3月期における業績は下記の通りです。同社はメディア事業と宇宙事業を展開しており、スカパー!はメディア事業に含まれます。コロナ禍でもスカパー!の加入件数は伸びなかったようで、メディア事業の収入は年々減少しました。ちなみに22年2月期の減収は会計基準の変更が主な要因で、加入者数減少による減収幅は34億円です。 【株式会社スカパーJSATホールディングス(2020年3月期~2024年3月期)】 営業収益:1,395億円→1,396億円→1,196億円→1,211億円→1,219億円 営業利益:153億円→192億円→189億円→223億円→265億円 メディア事業の収益:944億円→884億円→673億円→657億円→636億円 宇宙事業の収益:452億円→512億円→523億円→554億円→583億円 なおメディア事業は年々落ち込んでいる一方、宇宙事業の売上は増加しました。同社は静止衛星を17機保有(共同保有含む)しており、宇宙事業ではこれらの衛星を使い、収入を得ています。24年3月期における宇宙事業の内訳は次の通りです。 ①国内(48%):官公庁(防衛・災害関連など)や通信事業者からの衛星通信収入 ②放送(21%):CS放送事業者への回線提供 ③グローバル・モバイル(27%):海外通信事業者からの収入。航空・船舶に対する回線提供 ※その他に新規事業領域の収入が4% 近年では②の放送関連収入が減る一方、航空機でのWi-Fi接続サービスなど③のグローバル・モバイル領域が伸びており、宇宙事業全体として収入が増え続けました。

2030年までに「3,000億円を投資」

今後については、2022~2030年度の間に3,000億円規模の投資を行う方針です。主力となった宇宙事業に2,500億円、メディア事業に500億円を想定しており、22年度・23年度合わせて既に413億円の投資を行いました。また、今年3月には宇宙スタートアップとの協業に向けて100億円の投資枠を設定したと発表しています。 同社はこれまでの20年で17機の衛星を打ち上げました。1機あたりの調達・打ち上げコストは200~400億円程度で、寿命は10~15年のようです。ロケットは主に欧州宇宙機関(ESA)のアリアンを使っています。平たく言えば、コストをかけて衛星を打ち上げ、放送・通信で回収する商売。用途が未知数な部分もありますが、衛星通信の市場規模は今後10年間で2倍になると予想されています。 メディア事業の収入が確実に減るなか、同社は宇宙事業メインの企業として生まれ変わっていくことでしょう。衛星を使った新規事業についても期待したいところです。 <TEXT/山口伸>
経済・テクノロジー・不動産分野のライター。企業分析や都市開発の記事を執筆する。取得した資格は簿記、ファイナンシャルプランナー。趣味は経済関係の本や決算書を読むこと。 Twitter:@shin_yamaguchi_
1
2
おすすめ記事
ハッシュタグ