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『地球の歩き方』と『ムー』が異色のコラボ。予想以上の反響も、いったい誰が買っているのか…編集長を直撃

『ムー』読者のリテラシーは驚くほど高い

もうひとつ『ムー』の魅力の1つは、読者との距離の近さ、そして読者自身の熱量の高さにある。 「以前、平将門のミステリースポットを巡るバスツアーをやったんです。編集長と一緒に回るという企画でした。とにかく参加者全員が楽しそうで。『ムー』の読者って、普段は自分の興味を隠している人も多いんです。でも、このツアーでは同じ興味を持つ人たちと出会えるわけです。まるで『隠れキリシタン』同士が出会ったような雰囲気でしたよ」 このツアーを通じて、結婚にまで至ったカップルも誕生しているというから『ムー』は少子化対策にも貢献しているのかもしれない。 しかし、そんな「熱い読者」がいると書くと、この記事を読んでいる読者は驚くかもしれない。なにせ近年はQアノンなり暇アノンなりのネットを通じて一線を越えてしまった「ヤバ過ぎる陰謀論者」が溢れているからだ。 ところが、日本のオカルトを担ってきた『ムー』読者のリテラシーは驚くほどに高いという。 「本当にリテラシーは高いです。むしろ編集部より賢いくらいです。だって『ムー』の記事は先月号と今月号で矛盾していることも当たり前です。UFOの乗組員が地底人だと書いたかと思えば、未来人と書いていることもあります。いろんな説を読んで、自分なりの解釈をする。そんな楽しみ方をしているんじゃないでしょうか。読者からも、そうした説を比較して持論を記したお便りがよく届きますよ。いずれにしても『ムー』が45年も続いているのは、読者の方々のおかげです。時代とともに変化しながらも、不思議なものへの興味は普遍的なものだと実感しています。これからも、その好奇心に応えていきたいですね」

ネタ探しは「毎号大変」

号によってネタが矛盾する理由は、まずネタ探しに困っているからである。 「本当に大変なんです。面白いネタがあれば、すぐに飛びつきます。でも、単に奇妙な話を集めるだけじゃダメなんです。読者が『へえ、そうなんだ』と思えるような、ちょっとした裏付けや考察も必要なんです」 三上氏は、ネタ探しの裏話も教えてくれた。 「海外のミステリースポットを取材に行ったことがあるんです。現地に着いてみたら、噂ほど不思議でも何でもなくて。でも、そこで暮らす人々の話を聞いていると、また違った魅力が見えてくる。そういう意外性も『ムー』の醍醐味なんです」
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創刊45年の歴史を支えてくれたのは…
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ルポライター。1975年岡山県に生まれる。県立金川高等学校を卒業後、上京。立正大学文学部史学科卒業。東京大学情報学環教育部修了。ルポライターとして様々な媒体に寄稿。著書に『コミックばかり読まないで』『これでいいのか岡山』

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