恋愛・結婚

“非の打ち所がない”20代男性の背筋がゾクっとする正体。「マンションの扉を開けて出てきたのは…」

扉を開けた途端、酔いが一気に冷めることに

 金曜日の夜ということもあり、二人はコンビニでお酒を買い込んだ。彼に内緒でコンタクトレンズの保存液もこっそり買った。手を繋ぎエレベーターを上がり、部屋のドアの前まで来た。しかし扉を開けた途端、酔いが一気に冷めることになる。 「彼がドアを開けたら、部屋の電気が付いてるんですよ。おかしいな、ってそのとき思ったんですけど、彼の癖なのかなって。それで彼が、ただいま、って言ったんですね。ちょっと理解ができなくて。すごく混乱しました」  部屋の奥から、「おかえりー」という女性の声がした。背筋がゾクっとした。その声が彼の母親であることを理解すると、玄関の前で立ちすくんでしまい、靴を脱ぐことを躊躇った。

付き合って1時間後に母親と会うなんて…

「はじめまして」と、彼の母親に挨拶されるも、引きつった作り笑顔しか返せなかった。たまたま来ていたのか、それとも一緒に住んでいるのか。聞きたいことは山ほどあるが、彼には何も聞けない。靴を脱ぎ、会釈をして、「おじゃまします」と言って部屋の中に入るしかなかった。 「その日のことはほとんど覚えていないんですよ。彼のお母さんと彼が何か話をしていたのを愛想笑いしながら頷いていただけで、全然聞いてはなかったですね。苦痛でした。付き合って1時間後に母親と会うなんて想像できませんよ」  佐藤さんは母親が帰っていくのを見守ったが、そんな素振りを一切見せることなく時間が過ぎ、気づけば終電の時間が迫っていた。三人で一夜を過ごすことが恐ろしく、逃げるようにしてその場を去った。腹立たしい気持ちのまま自宅へ帰り、彼に騙された気がして泣いてしまったという。 「最悪な気持ちでした。家にお母さんがいるって、一言あってもよかったと思うんです。でもそういうのもまったくなくて」  別れることも考えたが、それ以外に悪いところは一つもない。たまたま母親が来ていただけの可能性もある。そう自分に言い聞かせ、彼とのメッセージや電話は普通に続けた。
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「二人で会えないの?」と聞いてみるものの…
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