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「汚れた東京湾を8キロ泳いだ」防衛大卒の女性が語る学生生活。学内の“恋愛事情”も

最初の数日で1割辞める世界

 最近の調査によれば、日本の大学生が卒業を待たず中退する率は約1割。これに対し、防大に限ってみると、これよりもっと多くの学生が辞めてしまうそうだ。 「防大で生活を始めるのは4月1日ですが、正式な入校式は5日です。この数日間は、いわばお客様扱い。上級生が厳しく接してくることはありません。ですがその間、2年生に対しては厳しい態度を見せつけるのですね。それで震え上がって、即辞めてしまう新入生が続出します。私が2007年に入校した頃は、男女合わせ約520名いたのが約470名へと、最初の数日間でいきなり1割近く去りました。  入校時の退校ラッシュの後も、少しずつ減っていき、卒業までにさらに1割がいなくなります。コロナ禍の間は辞める割合が特に高く、1年生のうちに2割ほど辞めたと聞きます。そうして辞めた人の少なからずは、浪人してほかの大学を目指します」

朝から晩まで息つく暇もないほど忙しい

女性自衛官

※画像はイメージです

 防大生の日常といえば、肉体的な訓練に明け暮れる姿を想像するが、意外にもそうではないという。松田さんは、あくまでも「学業が主体」だと話す。 「防大には、人文系が3学科、理工系が11学科あって、航空宇宙工学科は特に人気です。私は、人間文化学科で心理学を学びました。カリキュラムは他の大学とそう変わりませんが、国防論や統率論といった防大ならではの課目もあります。  防大生の平日は、朝6時の起床から始まり、夜は10時15分までの自習時間でしめくくりです。授業がない時間帯は、休憩のようになりますが、それ以外はびっしりとやるべきことで埋まっています。夏休み、冬休みはありますが、他の大学よりだいぶ短いです。なおかつ夏は、訓練だけの1か月があります。1年生ではすごく汚れた東京湾を8キロも泳いだりしました。  2年生になると陸、海、空と分かれるのですが、陸は銃を持って走り、海はカッターと呼ぶ手漕ぎボートを操ったりと、どれもキツイものです。陸上要員では、きわめつけが4年生の夏に行われる、101キロ行軍です。3日間、夜の山を歩いて、4日目の朝に敵陣に突撃するのですが、あれはしんどかったです。どの訓練も、負荷は男女ともに同じ。筋力はどうしても劣る女子だからといって、手加減はないです。逆に、学業に関しては女子の方が、圧倒的に成績優秀です」
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容赦ない指導でメンタルを病むことも
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ライター、写真家、ボードゲームクリエイター。ちょっとユニークな職業人生を送る人々が目下の関心領域。そのほか、歴史、アート、健康、仕事術、トラベルなど興味の対象は幅広く、記事として書く分野は多岐にわたる。Instagram:@happysuzuki

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