お金

“スマホの失敗”が痛かったバルミューダ。「トースター」に代わるヒット作が“生まれにくい”理由

「ただ高いだけのスマホ」と酷評されてしまい…

 バルミューダはイケイケだった21年11月に初のスマホ「BALMUDA Phone」を発売しました。価格は堂々の10万4,800円。手のひらサイズ、丸みのあるボディが特徴です。10万円越えならハイスペックが予想されますが、これが価格に見合わない低スペックであり、国内外でかなり酷評されました。OSはAndroidでオクタコア、メモリ(RAM)は6GBです。データを記憶するメモリ(ROM)は外部SD非対応のスマホであるにもかかわらず128GBしかありません。スペックを見るだけでも10万円は高く、半分以下の価格設定が適正です。  21年度はバルミューダの認知度やファンの存在もあり、スマホ関連では28.5億円の売上を記録しました。しかしその性能が明らかになると売上は伸びず、翌年度は8.7億円にまで減少しています。そしてついに昨年度、バルミューダはスマホ事業からの撤退を決めました。スマホ事業は売れなかったばかりか、「バルミューダ」のブランド力も傷つけたように思えます。

改善策は開発力を落とす方向に

 その後はホットプレートなど新商品を販売し、一定の評価を受けていますが、BALMUDA The Toasterに代わるヒット作を出せていないのが現状です。今年2月に発売した新型トースターの「ReBaker」はスチーム機能をカットしたうえで24,200円と従来品より安く、一見客を集めたい狙いが伺えます。  一方で近年の業績改善策は商品開発力を落とす方向に走っています。デザイナー数は変わらないもののエンジニアはピーク時の約90人から今期1Q時点で57人となり、今年度の試験研究費も21年度と比較して3分の1以下となる3.4億円を予定しています。業績改善策として仕方ないと思われますが、開発力の低下は将来の稼ぎをじわじわと削ぐことになります。今後、同社からは目新しい商品が生まれにくく、似たような機能でデザインだけを変えた類似品が頻発されることになるかもしれません。 <TEXT/山口伸>
経済・テクノロジー・不動産分野のライター。企業分析や都市開発の記事を執筆する。取得した資格は簿記、ファイナンシャルプランナー。趣味は経済関係の本や決算書を読むこと。 Twitter:@shin_yamaguchi_
1
2
おすすめ記事