ライフ

“ぽっちゃり体型の泡姫”の人生を変えた出会い。今では「大会に出場する」までに

吉原から池袋に移って感じたギャップ

伊織さん

広告代理店時代の知見が役立った

 技術面が格段に上がったことに加え、もう1つの武器が伊織さんを助けた。 「広告業界にいたので、インパクトのある打ち出し方を考えるのが苦手ではないんです。風俗嬢が写真入りで書く『写メ日記』には通常、お客様へのお礼だったり、日常の他愛ないことだったりを書きます。でも私は、これまで印象に残った客について“いじったり”して、なかなか反響がありました。お客様はもちろん、スタッフや同じ店の嬢まで読んでいて、『面白かったです』なんて言われて(笑)」  吉原から現在の池袋へ拠点を移したのは、4年ほど前。当時はギャップに戸惑う場面もあったという。 「吉原は遊び方がこなれている男性が多かったのに対し、池袋は活力があって元気な感じのお客様が多いので、従来通りのやり方が通用しないこともありました。吉原では好評だった写メ日記での“お客様いじり”も、掲示板では『あの女、客を舐めてるのか』『殴りに行く』とかボロクソ書かれていて(笑)。最初は少し怖かったですね」

ジムに通って最初の半年で「16キロくらい落とした」

伊織さん

体を鍛えることで、考え方も大きく変わっていった

 現在の伊織さんの代名詞である筋トレソープ嬢への道は、どのように拓けたのか。 「これまでホストクラブへ頻繁に通っていたのですが、“推し”が卒業していくタイミングが重なってしまって。打ち込めるものを探していた時期に、ホストの子から紹介してもらったのが、パーソナルトレーニングジムでした。  最初の半年で16キロくらい落としたので、お客様からは賛否両論ありました(笑)。もともとぽっちゃりしていたので、それがよくて通ってくれたお客様もいたでしょうからね。ただ、私自身が、筋肉のある身体に魅了されたんです。トレーナーにも『私もその身体になれますか?』と質問したのを覚えています」  見違えるような体型を手に入れた伊織さんは、筋トレを通してこんな考え方を学んだという。 「単に見栄えが良くなっただけではなく、私は『自分を大切にしていいんだよ』という教えを得たと思っています。人が筋肉をつけ、痩せていく過程には、当然ですが、“体に良いこと”が必要です。栄養バランスのいい食事、ストレスのない環境、十分な睡眠時間。そんなことはみんな分かっているけれど、日常生活において犠牲にしてきていますよね。それは、自分を犠牲にして、命を摩耗させているんだと気付きました」
次のページ
父はギャンブル中毒で、母はアルコール依存症
1
2
3
4
ライター、エッセイスト。可視化されにくいマイノリティに寄り添い、活字化することをライフワークとする。『潮』『サンデー毎日』『週刊金曜日』などでも執筆中。Twitter:@kuroshimaaki

記事一覧へ
おすすめ記事
ハッシュタグ