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戦火を逃れて日本へ…ウクライナ人コスプレイヤーを直撃「日本のゲームとアニメが私の心を救った」

ロシア軍の空爆で眠れない日々が続いて

空爆されたオデーサの石油関連施設 アニャさん提供

 そんなアニャさんが日本で生活するようになったきっかけは、やはりロシアによるウクライナ侵攻だった。 「戦争が始まった頃、私は故郷のオデーサ(ウクライナ南部の都市)に住んでいました。最初は避難したくないと思っていましたが、ロシア軍の空爆が激しくて眠れないような日々が続いたこと、職場のあるオデーサの港が爆撃されたこと、自宅近くにもミサイルが落ちたことから、精神的に苦しくなって、国外へ避難することにしたのです」(アニャさん)   避難民として、日本に来たアニャさんであったが、異なる言語や慣れない異国での生活に苦労したという。当初、アニャさんの母親も一緒に来日したが、うまく適応できずに帰国してしまったとのことだ。また、ロシアによる激しい攻撃を受け続けている祖国のことを思うと、心が痛んだという。そんな中、アニャさんは元々好きだった日本のアニメやゲームのコスプレをしようと思いついたのだった。

前線へ向かうウクライナ軍の戦車 アニャさん提供

ウクライナでも人気の日本のアニメ作品

「日本のアニメに触れたのは、5歳の頃に『セーラームーン』に観たのが最初でした。当時、セーラームーンはウクライナの子ども達に大人気で私も大好きになりました。私の家のテレビはソ連時代の古いテレビで、白黒画面で観てたのですけど(笑)。その後、高校や大学で技術系の学科に進んだのですけど、同級生は男性ばかりで、彼らは日本のアニメやゲームが大好き。私も彼らと一緒にいろいろ話をして、いわゆる『オタサーの姫(オタクサークルの姫)』みたいな状況だったのです。それで、さらに日本のアニメやゲームについて、いろいろ知るようになりました。特に好きな作品?そうですね、『アキラ』や『エヴァンゲリオン』、『GANTZ』等が好きです。最近の作品では、『葬送のフリーレン』や『ダンジョン飯』、『ぼっち・ざ・ろっく!』等がウクライナでも人気があります」(アニャさん)。  日本のアニメ・ゲーム文化に親しみ、SNSでの人気も高まっているアニャさん。一方で、やはり、ウクライナへの思いも強い。「私のフォロワーの皆さんに、ウクライナの文化を知っていただけたら嬉しいです。今日は、ウクライナの伝統的な飲み物のクワス*の試飲会をしました」(同)。    

高身長がチャームポイントのアニャさん 筆者撮影

 筆者もクワスを御馳走になった。アニャさんが「ビールとコーラとパンと乳酸菌飲料の中間の様な味」と言っていた通りの味で、ほんのりと甘く、なかなか美味しかった。試飲会では、募金も集められ、ウクライナ人道支援のために寄付されるとのこと。恐らく、多くの日本人にとって、ウクライナの状況はテレビの向こう側の出来事なのだろうが、アニャさんの発信や活動が、ウクライナをより身近なものにしてくれるのかもしれない。 <取材・文/志葉玲> *通常、クワスには微量のアルコールが含まれているが、この日の試飲会で配られたクワスのアルコール度数は1%未満であり、参加した人々にも、あらかじめ微量のアルコールが含まれている旨は伝えられていた。
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