仕事

元リクルートの33歳女性経営者が語る「女性が起業する難しさ」…“下心丸出し”の先輩経営者に遭遇することも「俺がいい女にしてあげる」

「浮気を繰り返していた」父の背中を見て

――一面だけを切り取らず、トータルで見てそうした人を「精力的」と肯定的な面で捉えられる内田さんのような人は少ない気がします。 内田:生育歴も関係するかもしれません。私の父は早稲田大学在学中に公認会計士資格を取り、起業もした優秀な経営者でした。母は専業主婦という家庭で、私は育ったんです。父は浮気を繰り返していましたが、結局最後は母のところに戻っていました。今にして思うと、誰にも打ち明けられない苦悩が彼にもあって、それを家族にも言えずに浮気相手と関係性が深くなっていたのでしょう。  だから私は、他人に作用するようなものを作れる優秀な人間は、キャパシティが広いのだろうと理解しています。不倫が道徳的に悪いことは誰でも知っていますが、単線的な「不倫=悪」という教科書通りの言説だけでは捉えられないさまざまな物語があるのではないかと考えているんです。

女性が仕事をしてキャリアを築く意味

――人間のネガティブな面をみても、切り捨てずに冷静に観察する眼は、どんなところで養ったのでしょうか。 内田:人生は何事も経験だと私は思っているんです。口説かれたり、妬まれたり、いろんなことがありますが、それも私という人間が少なからずその人に影響を与えたということだと考えています。それ自体は非常に貴重だし、光栄ですよね。  さきほどの男性経営者からの“口説き”について言えば、「相手にそうさせている自分の責任もないわけではない」くらいに考えています。自分のステージを上げることによって、そのレベルの人が寄ってすらこないところに到達すればいいだけの話ですし。ネガティブな事象に出くわしても恐れずに挑戦する自分でありたいし、そういう人を積極的に応援していきたいんです。 ――内田さんが、女性関係に問題のある父親と同じ経営者を志したのも興味深いですね。 内田:当時の母は専業主婦であり、経済的な自立をしていませんでした。その姿を見ていたから、女性であっても経済的自由を手に入れることは大切だと考えていました。私の家庭に限らず、女性が男性に対して経済的に依存しなければならないケースは未だに多いと思います。女性が仕事をしてキャリアを築くことは、経済的自立を達成できるだけでなく、世間における自分の価値を高めることにもつながると私は考えています。
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女性経営者間で起こった怖い話
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ライター、エッセイスト。可視化されにくいマイノリティに寄り添い、活字化することをライフワークとする。『潮』『サンデー毎日』『週刊金曜日』などでも執筆中。Twitter:@kuroshimaaki

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