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「遺体に産んだハエの卵が…」特殊清掃業者が明かす、思わずゾッとしてしまう虫との戦い。“G”以上の耐久力を誇る“厄介な害虫”も

清掃には日数を要する

排水溝 ウジ虫にも種類があり、真っ白、真っ赤、背中に黒い点々がある個体など、さまざまである。 「布団を開いたところ、敷布団いっぱいにウジ虫が湧いていたことがありました。おそらく数千匹はいたかと思います。その数千匹が一斉に同じ方向に動き出すんですよ。暗いところに移動しようとする習性なのかもしれません。自由にバラバラに動く個体がいてもいいじゃないですか。でも軍隊のように同じ動きをするんですよね。何か集合意識が働いてるとしか思えないくらいの……生き物って不思議だなと思いました」  ここまでハエやウジ虫の被害があると、清掃にもかなりの日数がかかってくるようだ。 「とことん部屋を綺麗にしたはずなのに、お客様からまだハエが飛んでいるとクレームが入ったことがあったんです。『布団周りなどは綺麗にしたのにな』と不思議だったのですが、原因はお風呂場やキッチンの排水口でした。おそらく、シンクや風呂場で吐血をして、血が排水溝に固まってしまっていたのが原因だと思います。こうなってしまうと、毎日現場に行ってハエが出てこないかを確認しないといけないので、かなり骨の折れる作業でした。しかもこちらのミスなので追加料金などを取ることもできず……。そこから人が亡くなる前の動き方や動線まで意識するようになりました

問題はゴキブリよりもシバンムシ

 ハエの他にもゴキブリやシバンムシとの戦いが待っている。ゴキブリの駆除はそこまで難しくはないのだが、問題はシバンムシだという。 「ゴキブリの場合は薬品の散布で殺したり忌避させたりなどなんとかなるんですが、シバンムシは薬品がなかなか効かない。奴らはコンクリートの壁と、木や石膏ボードの壁の間に棲みついたりします。壁の裏までは薬品が届かないことが多いので、基本的には壁紙をはがしたりするのですが、壁って、ひどく匂いが染みついていたりしない限りは、費用もかかるので壊さないんです。  なので、シバンムシが棲みついていることに気づかないことが何度かありました。そうやって清掃を怠ると、シバンムシが出続ける家になってしまうんですよね。基本的には、存在が確認できなくても壁の後ろにも薬品がきちんと届くような作業をするようにしています。とはいえ、目視で確認できないため、なかなか難しいんですよね」  シバンムシが生き残ってるかどうか、餌を撒いて確認するなど、数日を要することがあるそうだ。 「虫の問題は本当にやっかいです。今までの経験上、マンションやアパートなどの集合住宅の場合、家と家の間に大量の虫がいる可能性が高いので、どうしても作業工程に数日かかる場合があります。  そのぶん、費用もかかってきます。見積もりに害虫駆除を入れないと、実際はひどい害虫被害があったり、特殊清掃をもう一度やり直さなくてはいけないといった事例も多々あります。虫を甘く見てはいけませんね」 <取材・文/山崎尚哉>
(公社)日本ペストコントロール協会認証技能師。1992年、東京都大田区生まれ。地元の進学校を卒業後、様々な業種を経験し、孤独死・災害現場復旧のリーディングカンパニーである「ブルークリーン」の創業に参画。これまで官公庁から五つ星ホテルまで、さまざまな取引先から依頼を受け、現場作業を実施した経験を基に、YouTubeチャンネル「BLUE CLEAN【公式】」にて特殊清掃現場のリアルを配信中!趣味はプロレス観戦
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