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「子どもを早く大人にしようという圧力が強すぎる」養老孟司が子どもの自殺増加に警鐘

なぜ自殺をしてはいけないのか?

 なぜ自殺をしてはいけないのか。この問いに、養老氏は死を3つに分類して説明する。 「自分の死である『一人称の死』、身内や友人、知人などの『二人称の死』、そして見ず知らずの人の『三人称の死』の3種類です。このなかで個人にもっとも大きな影響を与えるのは『二人称の死』です。というのも『自分の死』は自分で感じることはできないから。もちろん『三人称の死』にも心は動きますし、痛みます。が、それでも『二人称の死』の比ではない。自分の体なんだからどうしようが勝手だ、と考える人には、『二人称の死』の重みを知ってもらいたい。あなたの周囲の誰かに一生残る傷をつけてしまうかもしれないことを考えてほしいのです」

生きづらさを抱える人へのメッセージ

 養老氏は、生きづらさを抱える人にこう語る。 「『いま現在の自分』を『本当の自分』だと固定して考えていると、生きるのがつらくなります。周りも自分も永遠に変わらないと思ってしまう。でも僕は終戦によって社会がガラッと変わるのを体験した。毎日読み上げていた教科書を黒く塗りつぶしたのですから。  社会が変わると自分も変わる。変わらざるをえない。人は変わることができるのだと、そのとき知りました。僕にとって希望とは自分が変われること。その可能性は、誰にだってあることは伝えておきたいです」 【養老孟司氏】 1937年、神奈川県生まれ。解剖学者。東京大学名誉教授。『バカの壁』(新潮社)は460万部を超えるベストセラーに。ほか『唯脳論』(筑摩書房)など著書多数 ▶︎不安・悩みを抱える人の相談窓口 【インターネット】「まもろうよこころ」で検索 【電話】「#いのちSOS」0120-061-338 「よりそいホットライン」0120-279-338 取材・文/週刊SPA!編集部
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