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「7000万円借金があるけど」新卒で入ったTBSを“突如退社”したディレクター。「自分の最低ラインを決めれば何をしてもいい」

趣味だった深夜徘徊から生まれた番組が話題に

趣味だった深夜徘徊が番組に――『不夜城はなぜ回る』を企画した経緯は? 大前:学生の頃から、フラッと深夜の街中を徘徊することが好きだったんです。あとは、深夜の日雇いバイトで出会う海外労働者との交流が強烈な思い出として残っていて……。 普段出会うことのない“夜の世界”に生きる人々に注目すれば、別角度から世の中を知ることができるはずと思って、企画を提案しました。 ――自身が出演する形は最初から構想していたんですか? 大前:最初は違いました。ニュースでは現場のレポーターを映すことが多いですが、密着バラエティーではそういった演出はしないので。ただ「この番組は実際に取材したときのリアルを伝えるべきだ」と作家さんに言われて……。 だったら、取材先の空気感や感想を伝える役割として自分がレポーターで出演することが一番誠実だなと感じたんです。 珍しい番組と言われることも多いですが、取材する番組だと考えたら、いたって自然な形だと思っていますし、だからこそリアリティーを伝えられたのかなと思います。 ――『不夜城は~』は「ギャラクシー賞」を受賞しましたが、そのときの心境は? 大前:プロデューサーや作家の方々、出演していた東野幸治さんなどに神輿に担がせていただいて、そこに乗っていただけだと冷静に考えていました。 ただ、スタッフ一同が喜んでくれたり、取材相手の方々から「自分たちの生活を取り上げてくれてありがとう」と感謝の言葉をもらったりしたことは純粋にうれしかったです。

ドキュメントを撮るために退社を決意

TBS退社ドキュメントを撮りたかった――新進気鋭の若手ディレクターとして注目される中で、退職を決意された理由は? 大前:おかげさまで社内でも評価をいただいて、ドキュメンタリーを制作する部署の方から、「ドキュメンタリー映画を作ってみないか?」というお誘いをもらって、いくつか企画を出したんですけど、どれも自分の中では納得がいっていなくて……。 そんな時期に同世代の社員がちらほら退職をし始めていて、何でだろうと思っていたんです。そこで、自分が退職してみたらどうなるのかという実験的なドキュメンタリーを撮ることにしたんです。 ――ドキュメンタリーを撮るためだったとは(笑)。社内からの反発はなかったんですか? 大前:ドキュメンタリー部署の方は面白がってくれたので、会社を辞めた先輩たちにインタビューを撮り始めていました。 でも、人事と面談をする際にボイスレコーダーで音声を録音していることがバレてしまいまして(笑)。何かを暴露しようとしているわけではなく、退職する会社員のリアルを撮りたかっただけなんですが、さすがにダメでした。
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「不退転」と書いた紙と一緒に写真を撮って退職
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