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「7000万円借金があるけど」新卒で入ったTBSを“突如退社”したディレクター。「自分の最低ラインを決めれば何をしてもいい」

ABEMAで『国境デスロード』がスタート

アメリカ・メキシコ国境

メキシコ‐アメリカ国境付近。移民に厳しい姿勢をみせるトランプ大統領の就任前にアメリカに入国したい移民が殺到した ©︎AbemaTV

――TBS退社後、世界各国にある国境を命がけで越える人々に密着するドキュメントバラエティー番組『国境デスロード』がABEMAでスタートしましたが、その経緯は? 大前:まず、南米に行ったことがなかったので行ってみたいとは思っていました。それと母親がインドネシア人で過去に国境超えをした背景があったので、南米の国境を走るタクシー運転手になって、そこで暮らす人々の人生をドキュメントするという企画を考えました。 それをABEMAの知り合いに提案しましたが「危険すぎる」と止められて、どうしたら企画として成立するんだろうと悩んでいましたね。 ――企画が頓挫しかけたときに、どうブラッシュアップしていったんですか? 大前:元・テレビ東京でABEMAにいる高橋弘樹さんに企画の骨組みは面白がっていただいて、高橋さんから「視聴者のことを考えたほうがよい」とか「配信で見てもらえるものにしたら?」といったアドバイスをもらいました。 それを受けて、『不夜城は~』でやっていたような自身がレポーターになって体当たり取材するスタイルを意識することや、国境超えに成功できるかできないかを分からない形にするとか改善を繰り返し、ようやくオンエアできることになりました。

現地通訳から「お前に何がわかるんだ?」と言われた経験

ベネズエラ‐コロンビア国境

ベネズエラ‐コロンビア国境ではパンツ一丁になり、移民と共にゴミ捨て場から食糧を探した ©︎AbemaTV

――実際にロケをしてみて感じたことは? 大前:命がけで国境越えをする人々に密着する番組ではあるのですが、すべてが危険な場所ではないし、その中でも力強く生きている人たちがたくさんいるんですよ。だから、危険ということを煽りすぎないように意識しています。 ――何かトラブルに巻き込まれたりしたことは? 大前:危険に出くわすことや驚くような経験もしていますが、一番印象に残っているのは現地の通訳と喧嘩したことですね。 自分なりにリアルを共有したいと思って、現地の人々と一緒にゴミ捨て場に入って食糧調達をしたことがあったんです。その後、日本から移民してきた通訳に「お前がたかが数時間だけ移民の真似事をするだけで何が分かるんだ?」というようなことを言われて……。 「じゃあどうしたらいいんだよ」と絶望して口論になり、最終的には殴り合いになってしまいました。 そのとき、通訳に言われた「お金を稼ぎたい、視聴数を稼ぎたいならそれでいい。でも、簡単に“ありのままを描きたい”と口にするのは見せかけでしかない」という言葉はずっと心に残っています。今もその葛藤は持っていますね。
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優秀なディレクターになって「戻ってこい」と言われたい
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