エンタメ

「7000万円借金があるけど」新卒で入ったTBSを“突如退社”したディレクター。「自分の最低ラインを決めれば何をしてもいい」

「不退転」と書いた紙と一緒に写真を撮って退職

TBS退社時

大前氏提供

――それでも退職されたのはどうしてですか? 大前:ドキュメンタリーを撮っていくうちに「会社を辞めて新しいことに挑戦したい」というマインドがすごく強くなっていたんです。20代後半の会社員が陥る「クォーターライフ・クライシス」と呼ばれる漠然とした不安を抱える時期も重なったのもありますね。 そこで実際に退職を申し出たら「5年以内に復職できる制度もあるから利用してみたら?」という前向きな返事をもらったので、退職を決めました。 ――クビではなかったんですね。心が広い。 大前:普通だったら怒られて会社に戻るなんてできるはずがないですけど、本当にイイ会社ですよ。 その代わり、尊敬している上司のプロデューサーに「いつか戻ろう」みたいな甘ったるい考えを持っていてはダメだと言われて「不退転」と書いた紙と一緒に写真を撮らされました。 『不夜城は~』についてSNSでエゴサーチして「まだ観ている人いないかな」とか過去にしがみついてしまうこともあったので、今でも写真を見返して初心を取り戻しています。

自分の中で最低ラインを決めれば「何をしても大丈夫」

TBS退社時の運搬バイト

TBS退社後は運搬バイトで生活費を稼いだ(大前氏提供)

――20代の若さでテレビ局員という肩書きを捨てる怖さはなかったんでしょうか。 大前:人よりも「なんとかなる」とは思っているタイプだとは思います。そういう性格は父親の影響が大きいかもしれませんね。 父は会社員を辞めて独学でパイロットの免許を取ったり、自称・発明家と名乗っていろんなモノを作ったりするハチャメチャなタイプの人間だったので(笑)。TBSを辞めるときも父親に「さすが俺の子供だな」って言われましたし。 ――完全なるDNAですね(笑)。では、まったく生活に不安は感じていないですか? 大前:いや、不安だらけですよ。新卒1年目で忙しかったときに、細かいことは分からないまま新築ワンルームの投資を2つ契約してしまって、売ることもできずにその借金が7000万円近くありますから。毎月必死に返済しています。 ――7000万?TBSを辞めた後に次の仕事のアテがあったんですか? 大前:なかったです。だからハローワークに行ったり肉体労働のバイトをしたりして、お金を貯めていました。 「貯金が200万を切ったらヤバい」という自分の中で最低ラインを決めていたので、その状況になるまでは「人間、何をしても大丈夫だろう」と割り切っていました。 でもショックだったのは、日雇いバイトをしているときにふと「つい最近までTBSにいたのに……」と思ってしまうときがあって。初めて「自分はプライドを捨て切れていないんだ」と気づいたんです。このままでは何をしてもうまくいかないと反省して、決意を新たにできました。 ――無鉄砲なイメージがあったので、意外でした。 大前:後先考えずに突っ走っていると思ってくださる方も多いですが、ちゃんと情けないし、人間としてダサい部分もありますよ。
次のページ
現地通訳から「お前に何がわかるんだ?」と言われた経験
1
2
3
4
5
【関連キーワードから記事を探す】