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絶滅危機…国内わずか6ヶ所「デパートの屋上遊園地」が“名古屋で復活”のワケ。レトロ遊具も再登場

バブル崩壊、防災、耐震化、少子高齢化――さまざまな要素が重なり閉園へ

福山そごう(広島県福山市)

1993年に開業した福山そごう(広島県福山市)の屋上遊園地「スカイパーク」の遺構。2000年の福山そごう閉店とともにわずか7年で閉園、現在は立ち入ることができない(写真:若杉優貴)

 高度成長期に全盛期を迎えた屋上遊園地だったが、1970年代後半になるとオイルショックに加えて、デパートやスーパーでの火災が頻発したことで避難設備・避難場所の設置が求められるようになったこともあり、屋上遊園地は早くも縮小の時代へと入った。  それでも、バブル期前後には「企業メセナ(文化活動支援)の一環」「競合企業との差別化」のため新たに屋上遊園地を設けたとみられる例も少なくなかった。例えば、バブル期前後の再開発計画に合わせて多くの店舗を出店した百貨店「そごう」は、すでに屋上遊園地が縮小しつつあった1980年代から90年代でも多くの新店舗に屋上遊園地を設けており、さらに開園から間もなかった千葉県浦安市の大型遊園地をはじめとした全国各地のテーマパークのオフィシャルスポンサーとなることで、一部店舗の屋上遊園地にそうした「大人気テーマパークの意匠・デザイン」を取り入れて人気を集めた。  実は、バブル期前後は旧・大規模小売店舗法(大店法)による大型店の出店規制・営業規制が厳しかった時代。このころの「屋上遊園地の拡大」の動きは、デパート・スーパー各社の「売場以外の施設を充実させて地域社会貢献の姿勢を見せることで有利な営業条件を得たい」「新規出店・増築が思うようにできないぶん売場以外を充実させることでライバル店に差をつけたい」という思惑もあったのだ。  しかし、そのようにして生まれた新しい屋上遊園地も、バブル崩壊による「百貨店・総合スーパー不況」、さらには少子高齢化の進行もあって「合理化の対象」となり、減少の一途をたどっていく。

レトロ遊具の宝庫だったあのデパオクも

丸広わんぱくランド

観覧車があった丸広百貨店川越本店の屋上遊園地「丸広わんぱくランド」。館内の耐震化工事に伴い2019年に閉園、大型遊具は撤去されて芝生広場となった。(写真:若杉優貴)

 21世紀になると、わずかに残った屋上遊園地は、「レトロブーム」もあって貴重な存在としてメディアなどで取り上げられる機会も多くなった。しかし、1990年代以降は各地で大きな地震災害が相次いだこともあり、老朽化した百貨店の建て替え・再開発、耐震補強工事などが活発になると、店舗の大規模補修に合わせて屋上遊園地も「閉園」となる例が相次いだ。  例えば2013年には東急百貨店東横店(東京都渋谷区)と松坂屋銀座店(東京都中央区)、2014年には松坂屋上野店(東京都台東区)と阪神百貨店うめだ本店(大阪市北区)、2023年にはスズラン百貨店高崎店(群馬県高崎市)の屋上遊園地が大型再開発・店舗建て替えのために閉園したほか、2008年には福屋百貨店八丁堀本店(広島市中区)の、2019年には東急百貨店吉祥寺店(東京都武蔵野市)と丸広百貨店川越本店(埼玉県川越市)の屋上遊園地が、老朽化した建物の補修・耐震化工事をはじめとした改装リニューアル工事の実施を理由として閉園している。  現在残る屋上遊園地も、多くが施設の老朽化や運営企業の後継者不足・人手不足などといった問題を抱えており、「今後も安泰」とはいえないところもある。
浜屋プレイランド

日本屈指のレトロ遊具の宝庫として知られた浜屋百貨店(長崎県長崎市)の「浜屋プレイランド」は2024年5月に閉園。運営企業の後継者不足も一因だったという。一部のレトロ遊具は市内のショッピングセンターに引き取られた(写真:若杉優貴)

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デパオク、「コト消費」「屋上緑化」で復活するか?
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都市商業研究所』。Webサイト「都商研ニュース」では、研究員の独自取材や各社のプレスリリースなどを基に、商業とまちづくりに興味がある人に対して「都市」と「商業」の動きを分かりやすく解説している。Twitter:@toshouken

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