仕事

“日給7500円のバイト先”で見た地獄絵図「仕事を覚えられず、毎日殴られる同僚」「やる気がないバイトは病院送りに…」

「週休2日で28万円」の条件につられて…

結局何度も魚加工場に通った。毎回3時間ほど箱に魚を詰めるだけで7500円の給料が出るし、山下さんが日々魚や段ボール、海老などで殴られていること以外に不満はなかった。そうして10回ほどバイトに行った頃「千馬君、前の話考えてくれたかな? 山下が来月やめちゃうんだよ」と小林さんが声をかけてきた。「待遇から聞かせていただけたら嬉しいです」と返事をするとすぐに手を引いて社長の元に連れていかれ「千馬君入ってくれるみたいっすよ!」と無責任に言い残して作業場に消えていった。 「待遇、こんな感じなんだけどどうかな?」 言うなり自社サイトの求人内容を見せられた。 ==================== 勤務日 :週5日(月~金)完全週休二日制 勤務時間:8時~17時(休憩1時間) 給料  :280000円~ ==================== 「午前中は倉庫の整理と業者から来る荷物の搬入してもらって、午後からは日雇いの子の指導と山下がやってる魚とか海老のカットを補助してもらう。気になったらバイト終わった後とか見てってもいいから!」 求人を見て心が揺らいだ。週休2日で28万円ももらえる仕事は高卒の僕にはなかなかないし、これだけ収入があれば当時付き合っていた彼女との結婚も考えられると思ったのだ。小林さんは僕に対して友好的だし、ちゃんと仕事を覚えればあんな風に殴られることもないだろう。 「わかりました、やりましょう!」 そう返事をしたことを数年経った今でも後悔している。

社員になった途端、態度が急変

そうしてまんまと社員になった僕は、朝の出社15分前に間に合うように職場に向かった。そして予定通りの時間に到着すると、小林さんが鬼の形相で腕を組んで仁王立ちしている。 「千馬! 遅えよ!!!」 早いねと感心されるような時間ではないにせよ、遅いことなどあり得ないだろう。時計を二度見すると小林さんは僕の胸倉を掴み「新人は1時間前には来るもんだろうがよ」と言う。人当たりのいい友好的な小林さんはどこへやら。あまりの人の変わりように震えあがった。 ひとしきり小言を言われたあと「倉庫に案内するからついてこい!」と言われ冷凍倉庫を案内された。かつて山下さんを殴打していた海老や白身魚の入った箱が所狭しと並んでいて、加工する分の食材を台車に乗せて加工場に運んだ。
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日雇いバイトとの間に流れる不穏な空気
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小説家を夢見た結果、ライターになってしまった零細個人事業主。小説よりルポやエッセイが得意。年に数回誰かが壊滅的な不幸に見舞われる瞬間に遭遇し、自身も実家が全焼したり会社が倒産したりと災難多数。不幸を不幸のまま終わらせないために文章を書いています。X:@Nulls48807788
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