仕事

年賀状の仕分けバイトの壮絶現場、ノルマをこなせず“廃棄”する老人も…

年賀状バイトにやってきたのはミスをしまくる老人ばかり!

 冬の長期休暇に合わせて、『アルバイト』をする人たちも多い。中でも年末年始限定のバイトの代表格といえば、“年賀状の仕分け”に他ならない。いくらメールやSNSが浸透としたとはいえ、まだまだ社会にとっては貴重な新年のご挨拶の文化、である。  毎年10月~11月頃に郵便局では「年賀状の仕分けアルバイト募集」というポスターや新聞広告を目にするが……令和時代、その現場は“地獄”と化しているという。今回は地方都市で郵便物の仕分けアルバイトを1年以上担当している田中宏之さん(仮名・40歳)が過酷な現状を明かす。 「CMでは『令和1年めは年賀状を送ろう!』なんて盛り上がっていますが、売り上げは芳しくない現状。人員は削減傾向にあり、去年は10人雇っていたのに……今年は70~80歳歳近くの高齢者が4人だけ。そのうち2人は、耳が遠いのか指示を理解できない、さらに途中でミスをしまくる。認知症の疑いもあると思っています……」
田中宏之さん(仮名・40歳)

田中宏之さん(仮名・40歳)

 正社員やベテランは大きな機械で仕分けするが、アルバイトは手区分と呼ばれる番地ごとに仕分ける“手作業”が中心だ。目で見て判断するため、スピード感が求められるという 「だから、高齢者の棚にだけ年賀状がどんどん積み上げられていく。焦れば焦るほどにミスが重なり、またやり直し……。高齢者は開き直ってしまい、勝手に休憩したり、話したりして全然仕事をしない。一度、認知症の疑いのある高齢者が、焦ったのか年賀状を捨てようとする事件がありました。もう僕らベテランで防ぎました。尻拭いのために僕らは勝手に残業もしますし……本当に地獄ですよ……」  若者のアルバイトを補充したらと思うかもしれないが、田中さんが働くのは製造業の盛んな某地方都市、年賀状仕分けを深夜から朝まで作業で日給8500円よりも、割のいい仕事がたくさん存在。それも若者が集まらない要因の一つのようだ。 「若者がきたとしても、その仕事の速さからか、負荷がすごい事になってしまう。結果、1日~2日程度で逃げだしてしまう。残るのは“なにもしなくてもお小遣いがもらえる”と学習してしまった高齢者と、我々ベテランだけなんですよ」

問題は「年賀状バイト」だけではない、郵便局の実態とは

   この現状に正社員との上の局員は気づかないのか?と思うが、正社員たちも苦しい現状があると田中さんは話す。 「社員も“自爆営業”と呼ばれる、1人数百通の販売ノルマは相変わらず課せられていますよ。一応社内には『自爆営業をしてはいけません』というルールが掲げられてはいるものの、自腹で買わなければノルマ達成は絶対に無理。  以前、私の母も郵便局で配達の仕事をしていたのですが、母は知り合いなどのツテを使ってなんと5000通も売りさばいた年がありました。しかし翌年、母は退職していたにも関わらず、当時の上司から連絡が来て『今年もお願い』と言われ……断り切れなかった母はまた知り合いに頭を下げて『ランチおごるから』なんて言いながら社員でもアルバイトでもないのに3000枚売りさばいたのです。  購入してくれた方へのお礼のランチ代を考えると自分で3000枚購入するよりも高くついています。にもかかわらず、その『3000枚を売った』という手柄はその上司のものになっていました……。ありえません」  さらに、年賀状はもちろん、お中元や「イベントゆうパック」なども社員・アルバイト関わらず「1人1件以上は販売せよ」と通達があり、田中さん自身もアルバイトでありながら今年年賀状を100通購入したのだそうだ。  なかなかに根が深い郵便局。今年の年賀状はきちんと届くのだろうか。 <取材・文/松本果歩>
インタビュー・食レポ・レビュー記事・イベントレポートなどジャンルを問わず活動するフリーランスライター。コンビニを愛しすぎるあまり、OLから某コンビニ本部員となり店長を務めた経験あり。X(旧Twitter):@KA_HO_MA
おすすめ記事