仕事

“日給7500円のバイト先”で見た地獄絵図「仕事を覚えられず、毎日殴られる同僚」「やる気がないバイトは病院送りに…」

作業する手が急に止まった、恐ろしすぎる理由

作業を再開して10分が経った頃、小林さんは徐々に普段の作業スピードを取り戻して作業に没頭していたが、急にその手が止まった。小林さんの視線の先にある海老に目をやると、ごつごつした指がくっついていたのだ。それが小林さんの指であることに気が付く頃には、小指の付け根からだらだらと滝のように血が流れ始めた。 だが、声を上げるでも苦悶の表情を浮かべるでもなく、ただそこに立ち尽くしている。僕がその場で救急車を呼んだあと、小林さんは無表情のまま一言「お前今日は帰れ」と呟き、傷口を洗いにいった。僕もその場に留まっているのが嫌で逃げるように帰った。そのあとのことはよく知らない。 結局次の日は最寄り駅まで行ったものの、出勤する気が失せて帰ってしまった。糸鋸で切ってしまった指は二度と戻らないし、仮に小林さんがやめてしまったら、次に小指を落とすのは僕のような気がして恐ろしかった。社長の番号から鬼電がかかってきていたけれど、着信拒否して家に帰った。心なしか、空がいつもより青いような気がした。 <TEXT/千馬岳史>
小説家を夢見た結果、ライターになってしまった零細個人事業主。小説よりルポやエッセイが得意。年に数回誰かが壊滅的な不幸に見舞われる瞬間に遭遇し、自身も実家が全焼したり会社が倒産したりと災難多数。不幸を不幸のまま終わらせないために文章を書いています。X:@Nulls48807788
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