仕事

“日給7500円のバイト先”で見た地獄絵図「仕事を覚えられず、毎日殴られる同僚」「やる気がないバイトは病院送りに…」

日雇いバイトとの間に流れる不穏な空気

「遅えよ! 元気ねえな!」 こんな感じで道中何回か食材で頭を殴られながら午前の作業が終わった。昼飯と煙草休憩を挟み、午後からは食材の加工に入る。加工したものは夕方か、翌日の朝に業者が取りに来るため結構なスピード勝負だった。バイトに来ていた時、箱に詰めていた魚の切り身を用意するのは午前中の社長の仕事だったので既に終わっていて、自分が加工場に入る前に日雇いバイトの子を呼んで説明した。 「この切り身を1段50枚、2段にして計100枚入れてね。隣の加工場にいるから終わったら声をかけに来て」 「へーい」 明らかにやる気がない。舐め腐っていた。日雇いバイトには人当たりがいいはずの小林さんもそのバイトの子を睨みつけていて、明らかによくない空気が漂っていた。だが箱詰めを終始見守るわけにもいかないので小林さんとその場を離れ、食材の加工を始めた。 この加工場でいう食材の加工は、冷凍された食材を糸鋸で調理しやすい大きさや形状に加工することで、糸鋸でカットした食材を手渡されて箱に詰めるのが新人である僕の仕事だった。そしてその日は海老のカットを山のようにする日だった。まず海老の足を切断し、そのまま身を半分にする。これを4時間ひたすら続ける。

“ぶん殴られた”バイトは病院送りに…

海老の裁断を半分ほど終えた頃「千馬、ちょっとバイトの様子見てこい。あいつ舐め切ってたからな」と僕に指示した。あまり気が進まなかったが様子を見に行くと、バイトは作業台に座ってスマホを眺めている。作業もまだまだ残っている状態で。僕は思わず声を荒げた。 「なんで終わってないのにスマホいじってんのよ。早く作業進めて!」 「……チッ」 舌打ちされてしまった。しかも作業を再開しようともしない。何を言っても無駄そうなので、そのまま加工場に戻ってスマホに夢中で作業が進んでいないことを報告。すると、小林さんはすぐにバイトに詰め寄り「てめえふざけんじゃねえよ!」とバイトの顔を原型がなくなるまでぶん殴った。僕も騒ぎを聞きつけた社長も必死に小林さんを止めたがもう手遅れで、バイトは白目を向いたまま泡を吹き、救急車で運ばれていった。 このまま業務も中止になればよかったが、納品しなければいけない海老の裁断がおわっていない。社長は小林さんを僕に任せてどこかへ行ってしまった。小林さんはぶるぶると手を震わせながら再び海老を手に取り、糸鋸での裁断を再開した。
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作業する手が急に止まった、恐ろしすぎる理由
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小説家を夢見た結果、ライターになってしまった零細個人事業主。小説よりルポやエッセイが得意。年に数回誰かが壊滅的な不幸に見舞われる瞬間に遭遇し、自身も実家が全焼したり会社が倒産したりと災難多数。不幸を不幸のまま終わらせないために文章を書いています。X:@Nulls48807788
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