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家族が濃厚接触者に…それでもバイトを休ませてくれない店長に対して…

―[モンスター上司]―
 連日の新型コロナウイルスに関する報道で欠かせないワードのひとつとなっている濃厚接触者。  当初は発病した日以降、感染者と2メートル以内の接触をその定義としていたが、現在は「発病した日の2日前から、感染者と1メートル以内かつ15分以上の接触」に変更されている。だが、いずれの条件にしても大変なのは同居する家族。感染が拡大する中、家庭内での感染が増えているからだ。

兄が濃厚接触者になり、バイトを休もうとしたが……

マスク

写真はイメージです(以下同じ)

「同じ実家住まいの兄が濃厚接触者になってしまったんです。自宅待機中の2週間は、家の中にいても感染したらどうしようって恐怖が常にあり、とにかく精神的に辛かったです」  そう語るのは、大学生の井上健司さん(仮名・20歳)。兄はトイレと入浴時以外は自分の部屋から一歩も出ず、自宅待機中は家族も神経質なくらいに家じゅうを消毒して回っていたそう。 「自分もそれこそ消毒スプレーを常に持ったままで、リビングで両親と話をするときも外出時と同じようにマスクを着けていました。素人ながらに感染力が強いことはわかっていましたし、母親は喘息を抱えていて感染したら重症化するリスクがあったので」 デリバリー さらにもし自分が感染していた場合を想定して、兄の自宅待機中はアルバイトを休むことを決断。デリバリーピザの配達だったため、同僚だけでなく届けたお客が感染する可能性もあり、迷惑をかけられないと思ったからだ。 「電話で店長に事情を説明したのですが、『濃厚接触者はあくまでお兄さんであって、君じゃないんだから』と欠勤を認めてくれませんでした。こちらも諦めずになんとか休みをもらえるようにお願いしましたが、しつこく言いすぎてしまったのかムッとした口調で『本当はサボりたいだけなんじゃないの?』と言われてしまいました」  ちなみにお店は外出自粛の影響もあって、注文の数は普段のおよそ2倍。しかし、バイトのシフトを回せるギリギリの人員だったそうで、休んで欲しくないという店長の気持ちも理解はできる。 「でも、本当に感染していたらバイト先の店舗だけでなくチェーン全体が休業に追い込まれるかもしれません。そうなれば莫大な損失になりますし、企業のイメージや社会的信用も失墜します。食べ物を扱う会社にとっては致命的ですし、自分のせいでそんなことになるのは耐えられませんでした」  店長は欠勤を認めないまま電話を切ってしまったため、再び連絡して休ませてもらえるように頼んだという。  ところが、店長は「濃厚接触者ではない人間の自宅待機は要請されているわけではないし、そうやっていろんな人間が休んでしまったら社会が回らなくなる」と主張。このままでは休めないと思った井上さんは、奥の手に打って出る。
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「保健所に報告」の一言でビビった店長
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ビジネスや旅行、サブカルなど幅広いジャンルを扱うフリーライター。リサーチャーとしても活動しており、大好物は一般男女のスカッと話やトンデモエピソード。4年前から東京と地方の二拠点生活を満喫中。

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