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オウムは皇居周辺への炭疽菌散布を計画していた――上祐史浩氏が語るオウム事件の真実(3)

‘12年、オウム特別指名手配中の3人が17年の逃亡の末に逮捕され、オウム事件に一つの区切りがつこうとしている。しかし、オウム事件の全貌は明らかにされていない。そんななか、教団内部を最も知る男、元最高幹部の上祐史浩氏がオウム事件の真実を綴った本「オウム事件 17年目の告白」が出版された。彼が語るオウム事件の真実とは何なのか。オウム問題を追及してきたジャーナリスト・有田芳生氏が迫る!

⇒【中編】オウム真理教と北朝鮮を結ぶルートは存在したのか?
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◆皇居周辺への炭疽菌散布を計画していた

有田:陰謀論は聞いているかぎりではおもしろいですからね。ところで、上祐さんは自分自身も炭疽菌事件に関わっていた。結局、炭疽菌散布は失敗に終わりましたが、そうならなければ、上祐さんのその後の人生もまったく違っていたのでは?

上祐史浩氏

上祐史浩氏

上祐:そのとおりですね。米国政府関係のテロ対策研究チームの調査に協力するなかで、彼らから言われたことがあります。教団の技術では有毒な炭疽菌の製造はそもそも不可能だったそうですが、仮に成功していたら、「あなたたち全員、散布の前の製造段階で死んでいましたよ」って。

有田:炭疽菌事件では、皇居も攻撃対象のひとつだった?

上祐:車載型の噴霧装置に培養液を詰めて、皇居周辺を取り巻くように噴霧したはずです。また当時、皇太子のパレードがある時期で、それを狙う計画もあった。拠点にする不動産を探しに行ったこともありましたが、その後、計画は立ち消えとなりました。

サリン事件

朝の通勤ラッシュ時に実行され、死傷者数が約6300人に上った地下鉄サリン事件。オウム真理教による未曽有のテロ行為は当時、日本のみならず、世界中に大きな衝撃を与えた

有田:オウム真理教について総括してみて、17年前の自分の姿は、今の上祐さんにはどういうふうに映っていますか?

上祐:誇大妄想と被害妄想の妄信状態で、一種の躁状態だったと思います。ただ、一面ではまだ落ち着いて、過去の自分の姿を振り返る心境になれない部分もあります。なぜなら、あのとき私が先頭に立って振りまいた陰謀論は、今もアレフの中に残ってしまっていますから。その問題が解決しないかぎり、私にとってオウムは現在進行形なわけです。アレフの体制も、私が出所後に築いたものであり、今なお麻原に従っている。これをどうにかしなければ、オウムの清算は終わらないと思います。

有田:しかも、アレフは増殖している。’11年だけでも約200人がアレフ入信を果たしています。

上祐:ええ。そこでひかりの輪では、オウムから自由になるためのリハビリを行うと同時に、アレフから新たに脱会する人たちの手助けもしています。

有田:オウム犯罪の被害者や遺族に対する賠償の問題もあります。

上祐:はい。ひかりの輪では、被害者団体と正式に賠償契約を結んで、それを実行しています。今回の印税収入もすべて、出版社から直接、被害者団体に振り込むことにしました。アレフの問題が解決して、麻原の死刑が執行されれば、新たなテロの可能性は根絶します。そうすれば、賠償の問題は残るにせよ、オウム問題の一定の清算にはなると思っています。

麻原彰晃

事件後、麻原彰晃は逮捕され、'06年に死刑が確定した。オウム事件の次なる焦点は「いつ麻原の死刑が執行されるか」に絞られつつある

有田:本を読み、上祐さんたちが過去から脱皮しつつあることはわかりました。それでも、私はあくまでも上祐さんたちを批判的に見続けたい。世間は、上祐さんたちがかつて、麻原の唱えた真理を守るために確信犯的に嘘をついていたことを覚えている。今後も「まだ嘘をついている」と疑う人が、ゼロになることはないでしょう。

上祐:そうですね。その現実を受け止めながら、今後ひかりの輪の思想の中心に据えていこうと思っているのは、自分を認めない存在を麻原のように否定するのではなくて、そこにも貴重な価値があると心得ることだと考えています。

有田:今後もいろんな批判がついて回るでしょうが、オウムについてもっと多くのことを語ることで、自らの置かれた状況に変化を起こしていくことです。それが上祐さんのこれからの人生に重く課せられた、社会的責任なのです。

【有田芳生氏】
オウムや統一教会などカルト宗教問題を取材してきたジャーナリスト。参議院議員。著書に『闇の男 上祐史浩—終わらないオウム真理教』(同時代社)、『メディアに心を蝕まれる子どもたち』(角川SCC新書)などがある

【上祐史浩氏】
’87年にオウム入信。地下鉄サリン事件後、麻原の指示の下、教団のスポークスマンとなる。偽証罪などで服役後「アレフ」代表となるも、’07年に脱会。オウム信仰を脱却し、現在は自ら設立した「ひかりの輪」代表を務める

構成/李 策 撮影/山川修一(本誌)
― 事件から17年――ついに語られるオウム事件の真実【3】 ―

オウム事件 17年目の告白

教団のスポークスマンとして世間を騒がせた上祐史浩氏が今まで語れなかった真実を告白

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