「バールのようなもの」ってどんな凶器?【事件報道の謎】
「むしゃくしゃしてやった」「ムラムラしてやった」など、事件報道には日常ではあまり使わない特有のフレーズがある。ほかにも「バールのようなもの」とか「みだらな行為」とか、気になる言い回しがいろいろ。そんな事件報道における定番用語のナゾに迫る!
◆Q.「バールのようなもの」「刃物のようなもの」って曖昧すぎない?
「これは、警察がまだ凶器を発見していない場合。警察の発表文にそう書いてあったり、取材対応した副署長などがそう答えたりするので記事もそうなる」と説明するのは、全国紙の地方支局勤務の記者A氏。また、「『刃物様のもの』といった、起訴状など公式文書で用いられる独特の表現も関係しているのでは」(全国紙で社会部経験の長い記者B氏)という指摘もある。
「捜査や裁判では、確定事実と不確定事実を明確に分けるのが基本。それと同じく、新聞記事も確定事実と不確定事実をできる限り峻別しようとするところがある。たとえば事故の記事だと、『何月何日午前何時何分頃、国道○号線○○付近でXさんの車とYさんの車が衝突した』というのは確定事実だから明記するけど、『○○署の調べによると、Xさんが何らかの理由で反対車線に進入したことが原因らしい』というのは不確定事実だから曖昧な表現にしておく、みたいなことです」(同)
一方、元刑事の小川泰平氏は「最新の科学捜査では、被害者の傷跡などから、凶器のタイプや形状、刃渡りなどが全部わかる」と語る。
「とはいえ、肝心の凶器が発見されていない状況で凶器を特定するような報道が流れてしまうと、それを見た犯人が逮捕後、証言を偽るかもしれない。だから凶器が見つかるまでは“秘密の暴露”を避けるため『○○のようなもの』とボカした表現をするわけです」
なるほど、適当にごまかしてるわけじゃなかったのね。
◆A.凶器が発見されていない以上、断定はできない
イラスト/カネシゲタカシ
― 事件報道の[ありがち用語]ウラ読み辞典【3】 ―

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