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司法ジャーナリスト長嶺氏が見た「震災犯罪」の悪辣さ

長嶺超輝氏

長嶺超輝氏

「横行する震災犯罪の中で、最も悪質なのは、被災地入りした犯罪者が被災者を喰い物にするケース。津波で家も家族も流された人のお金まで奪っていくとは、卑劣としか言いようがない」

 そう語るのは、これまで仙台や福島の裁判所に足繁く通い、震災犯罪の傍聴を続けている司法ジャーナリストの長嶺超輝氏だ。

「震災発生直後、混乱の中で、被災地では被災地外の者による窃盗事件が相次ぎました。以前、傍聴した裁判のケースだと、わざわざ広島から軽トラで仙台まで移動して窃盗を繰り返していた2人組がいた。彼らはカーナビで工場を検索し、鉄パイプなどの資材を盗んでいたんです。こうした事案を傍聴して思うのは彼らの多くが20~30代の若い男性で、前科・前歴1、2犯といった者たち。そして、何よりも“安易”に被災地入りして窃盗を繰り返しているというのが特徴的です」

 本特集(http://nikkan-spa.jp/421149)で紹介したような“犯罪のプロ”の事案とは違い、窃盗の場合、安易な素人の犯行も目立つ。東日本大震災は、こうした末端の犯罪者まで犯行に駆り立ててしまったのである。

「震災犯罪を裁く法廷でよく耳にするのは“人としてやっちゃいけない”“火事場泥棒”というフレーズです。震災に付け込んだことを理由に量刑が重くなることはありませんが、裁判官の口調も自然と強くなっているような気がします。福島地裁で警戒区域の無人宅侵入盗をしていた男2人組に、裁判官が“さっきから『自分の甘さ』ばっかり言っているけど、その言葉、禁句にしよう”と窘めたこともありましたね」

 卑劣な震災犯罪に走った犯罪者たち。「火事場泥棒」という悪質な犯行を真摯に受け止め、早く更生の道を歩んでほしいものだ。

【長嶺超輝氏】
司法ジャーナリスト。仙台や福島の裁判所に通い、東日本大震災に付け込んだ犯罪の背景を取材中。著書に『裁判官の人情お言葉集』(幻冬舎新書)ほか多数

取材・文・撮影/鈴木大介 高下けあき
― 震災で一儲けを狙った[火事場泥棒たち]の今【7】 ―

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