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K-POPアイドルはなぜみんな同じに見えるのか?

少女時代、KARAを筆頭に、昨年夏頃から加速度的にお茶の間で目にすることの多くなったK-POPアイドル。一部の若者たちの間では熱烈な支持者も多く、「韓流の聖地」と呼ばれる新大久保ではド派手なハングル文字のネオンが深夜までギラギラと光り、週末ともなると若いK-POP女子が束となって道に溢れている。事実、新大久保に年間訪れる旅行者の数は東京タワーを超え、いまや第二の原宿と化しているというのだ。
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都内各地で開催されているK-POPナイトでは、韓国グループアイドルをコピーしたダンスユニットが多数参加している

しかしそんな風潮とは裏腹に、こんな声も聞こえてくる。 「メンバーの顔と名前の区別がつかない。それどころかグループの区別もつかない」 「なんでみんな似たようなグループで、似たような曲ばかり歌っているわけ?」 ディープなK-POPファンにしてみれば、それぞれ個性も特徴もあり、見分けがつかないなんてことはないと主張するかもしれない。だが、K-POPにさほど詳しくない記者にしてみれば、どれも似すぎているという意見もわかるのだ。その理由とはなにか? 韓国芸能事情に詳しい『韓流エンタメ日本侵攻戦略』の著者・小野田衛氏に聞いてみた。 「あるタイプの曲が一度流行ると、チャートはすぐに似たような傾向の曲で埋まります。3年ほど前までは、韓国の歌番組でもバンドやトロット、バラード、DJスタイルなど様々なタイプのアーティストが出演していたのですが、今はフックソング(少女時代の『Gee』が代表例。「ジージージージー……」と1曲の中で同じフレーズを繰り返す曲構成)を駆使したグループアイドル一辺倒です。これはドラマでも同様で、男装した少女がバンドメンバーと恋に落ちる『美男<イケメン>ですね』がヒットしたら、『トキメキ☆成均館スキャンダル』『コーヒープリンス1号店』『風の絵師』と次々に男装ドラマが放送されます。こうも立て続けに似た内容のドラマを連発されると、他に題材にするテーマはないのか? と突っ込みたくもなります」 作品紹介の中で「視聴率50%超え!」「韓国人の3人に2人は観た映画!」などと記されることもあるが、これも日本人からすると違和感が強い。かつては日本でも巨人戦や紅白歌合戦が国民的な共通娯楽として成立していた時代があった。しかしそれは遠い過去の出来事であり、韓国人がいまだ一斉に熱狂する様を見ていると、没個性なのではないかと疑いたくもなってしまう。 「一概には言えませんが、これらはひとえに熱しやすく冷めやすい韓国人の特性から来るものです。韓国には『鍋根性』という言葉があります。この場合の鍋というのは、底が浅く、すぐ沸騰するタイプのものを指しますが、すぐ沸騰してすぐ冷める韓国人のメンタリティを表しているわけです」 「右へ倣え!」という心理が働きやすい土壌なのだ。 「これは知り合いの韓国人コーディネーターに聞いた話なのですが、徴兵制度が韓国人の個性を奪っているという意見もあります。軍隊は徹底して同じ価値観が強要される世界で、口答えなんて絶対に許されません。トイレに行くにも許可が必要で、風呂だってみんなと一緒。そうすると自我がガタガタになって、徴兵から戻る頃には同じような目をした人間になっているというわけです」 こうした韓国人の「鍋根性」と「右へ倣え主義」。何かが流行すると一気にそっちを向く傾向は、制作者サイドとしてはくみしやすいだろう。売れるものが集中しているため、流れに合わせて同じような作品で攻めればブームに乗りやすいのだから。 「日本のように趣味が多様化した社会というのは、消費者としては恵まれているのでしょうが、ビジネスする側にとってはターゲットが分散していて金儲けには向いていないということもいえます」 「今、日本で一番流行ってる曲は誰の歌?」と尋ねられて即答できる人は少ないだろう。単純に売り上げベースでいえば、嵐、AKB48ということになるのだろうが、実際にその歌をどれくらいの日本人が知っているかといえば、はなはだ疑問だ。 「Wonder Girlsのヒットソングに『Tell Me』という曲があるのですが、韓国では小学生から教師、軍人まで踊りまくるので、Tell Meシンドロームと騒がれたほどです(笑)」 円熟期を迎え、カルチャーの多様化が進んだ日本の芸能界とは対照的に、国内市場が小さく海外に進出するしかない韓国芸能界では、「確実に売れる」が至上命題である。 こうして韓国では2匹目のドジョウを狙い、似たような作品、似たようなグループばかりが溢れかえるようになったというわけだ。 取材・文/スギナミ 【参考図書】 『韓流エンタメ日本侵攻戦略』 小野田 衛・著 扶桑社新書 本体720円+税 日本の若者たちはなぜK-POPに熱狂するのか?日本人が知らない韓流ビジネスの正体、韓国芸能界の裏側を徹底した現地取材をもとに考察。
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