世界に吹き荒れる緊縮財政の嵐が財政デフレを繰り返す
◆マネーな人々 今週の銭格言
【選者】政治経済学者 植草一秀氏
日本株価は指標から判断して割安だが、世界連動株安に同調してしまっている。その背景には、世界的な財政再建原理主義という旋風が存在する。巨大な不良債権問題を軽視して緊縮財政を強行すれば、思わぬ落とし穴にハマりかねない。
◆“株式市場の世界連鎖下落。世界に吹き荒れる緊縮財政の嵐が財政デフレを繰り返す”
前回本欄で、米国の政府債務引き上げ、欧州各国の債務危機、日本の増税政策の3つのリスクが回避されれば、日本株価の大幅反発の可能性があると記述した。(※)
※東証第1部上場企業のPER(株価収益率)から見える日本株急騰の可能性
https://nikkan-spa.jp/64935
日本株式の指標面から見た割安感は変わっていないが、日経平均株価は逆に下落して9000円を割り込んだ。その最大の理由は、債務上限引き上げ問題が、米国の超緊縮財政政策を引き連れてきてしまったことにある。
米国は来年、12年に大統領選がある。野党である共和党は10年の中間選挙に勝利して、下院で多数政党にのし上がった。この勢いで来年の大統領選勝利を目指す。望ましいことではないが、共和党からすると、オバマ政権が経済政策運営で失敗することを追及してしまう傾向が出やすい。共和党は、債務上限引き上げ法の成立に協力する代わりに、オバマ政権に緊縮財政政策を求め、大規模な財政赤字削減策が実行されることになった。
そのため、JPモルガンチェース銀行は緊縮財政で’12年の米国実質経済成長率が1.75%ポイントに引き下げられるとの試算を発表。金融緩和政策についてはFRB内部で、追加的な金融緩和政策に慎重な意見が噴出し始め、多くを望めない状況にある。
この状況下で、財政政策が超緊縮の方向に舵を切れば、財政デフレが発生する恐れが高まる。留意が必要なのは08‐09年に燃え広がったサブプライム金融危機の火種が燻っていることだ。
※【後編】につづく⇒https://nikkan-spa.jp/62046
【選者】政治経済学者 植草一秀氏
シンクタンク主席エコノミスト、大学教授などを経て、現在はスリーネーションズリサーチ㈱代表取締役。ブログ「植草一秀の『知られざる真実』」(http://uekusak.cocolog-nifty.com/)も人気。著書に『日本の独立』(飛鳥新社刊)

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