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【牛乳配達会社】自爆営業で、手取りが月11万円に…

「自爆営業」は日本郵便に限られた話ではない(※前編参照:http://nikkan-spa.jp/635981)。職員に、自社の製品を買い取らせたり、必要経費を負担させたりは、じつに多くの職場に浸透している。

自爆営業 たとえば、若者が商品を満載したリヤカーで買い物難民の多い地域を行商することで一時期有名になったターベルモーノ社(屋号は「築地野口屋」。すでに倒産した。現在は、他社が同じ屋号を引き継いでいる)。

 ここでは、マスコミに好意的に取り上げられているときも、売れ残り商品を、社員割引価格で従業員たちに買い取らせていた。人によっては年に10万円くらいを自爆した。自爆営業が起こるということは、経営が危ない証拠だ。事実、ターベルモーノ社はその後、負債を抱え、多くの従業員に給与未払いのまま事業停止した。事業停止を従業員に知らせたのは、その前日のいっせいメール。従業員たちはいきなり路頭に迷ったのだ。

 また、配達に必要なガソリン代や車両リース代など月9万円前後を給与から控除する牛乳配達会社のN社。N社で働くのは個人請負業者ではない。正社員だ。だが必要経費を天引きされている。さらに配達本数の少ない人は、1本につき30円を給与から天引きされる。しかも、ボーナスも退職金もない。社員は会社に向かって叫ぶ。「月11万円の手取りでどうして生きていけましょうか!」

 このN社。東京都の労働委員会でも審問にかけられ、負けた。裁判にもかけられ、やはり負けた。だが、そのどちらにも従わず、今もガソリン代と車両リース代の控除はなくならない。ある意味、すさまじく気合の入った会社である。

 中国の毒餃子事件以来、トラックの運送業界では、積み荷を包む段ボールに傷がついただけで、積み荷の代金を弁償することがまかり通っている。それが精密機械であれば数十万円だ。これが給与から天引きされるのである。本来、積み荷の弁済は会社が行うことなのに、しわ寄せは社員に及んでいる。

 他にも、「売れ残りのクリスマスケーキを自腹で買い取る女性アルバイト」「紳士服売り場の店員が毎月、自腹を切り、買った自社スーツは数百万円」「消費期限切れの高級牛肉の自腹買取り」など、その例は数えきれない。

 だが、拙著『自爆営業』(ポプラ社刊)で訴えたいのは、自爆営業の実態に加え、自爆営業の必要がない社会だ。

 さきに、「そんな無茶なノルマは断ればいい」と書いたが、じつはそうしている人たちが日本郵便にはいる。わずか2000人で構成する労働組合「郵政産業労働者ユニオン」の組合員たちだ。自爆営業を拒否することで、昇進や昇給がとまるどころか、お咎めはほとんどないというのだ。間違っていることには間違っていると声を上げる。不当な扱いを受ける組合員がいたら、組合が全力で会社と交渉にあたる。その哲学に、会社は組合員をぞんざいには扱えないのである。

 N社でも、昨年小さな労組が立ち上がった。ガソリン代やリース代の控除はまだなくならないが、労使交渉で有給休暇の取得や定年退職の延長などを勝ち取っている。その組合員は「これまでは不満を飲み込むだけだったのが、会社に堂々と意見をぶつけ、その結果、労働条件が少しずつ改善しています。組合を作ってよかった」と心の底から、一緒に闘う仲間ができたことに安堵感を抱いていた。

 自爆営業は、経営の失敗を労働者に尻拭いさせるものでしかない。それに従う必要はない。そして、労働者を守るのは労働者自身だ。労働組合の力は大きい。やはり、結論はそこしかないと確信している。 <取材・文/樫田秀樹>

【樫田秀樹】
(かしだ ひでき)1959年、北海道生まれ。マスコミが扱わない環境問題や社会問題などを取材。ハンセン病を描いたルポ「雲外蒼天」で第一回週刊金曜日ルポルタージュ大賞報告文学賞を受賞。最新刊『自爆営業』(ポプラ社)が発売中

自爆営業

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