先日、ネプチューン・名倉潤が手術の“侵襲”によるストレスが原因のうつ病を公表したことは記憶に新しい。このように、それまで何の前ぶれもなく元気だった人が、意外な理由やきっかけで“急に”うつ状態になってしまう例は多いという。そんな「突然うつ」とも言うべき現象はなぜ起きるのか? 実態に迫ってみた。

ノルマをこなすため100万円超の自爆営業。突然、涙が止まらない
●島田利明さん(仮名・32歳・金融営業)
リーマン・ショックの影響で内定が取れず、就活生が阿鼻叫喚のなか、島田さんが新卒で入社したのは超有名な金融系の上場企業。仕事の成績もよく順調にキャリアを重ねていたが……。
【経緯】大企業に就職し順風満帆かと思いきや待っていた落とし穴
東京で営業職として働くこと6年、島田さんに地方都市の支社への転勤の辞令が下る。
「社内の慣例から、その支社への転勤はエリートコース。それまでの頑張りが報われたと思い嬉しかった半面、東京を離れるので少し不安もありました」
慣れ親しんだ環境から突然の地方都市への転勤。会社の社員寮に住みだしたことをきっかけに、島田さんの心は綻びを見せはじめる。
「仕事が終わって寮に帰っても顔を合わせるのは全員同僚。休日も友達がいないので一人で過ごすしかなく、息苦しさと寂しさで部屋に閉じこもるようになりました」
仕事中も気苦労が絶えなかったという島田さん。どんどん厳しくなるノルマをこなすため、自腹で投資信託を買う“自爆営業”にも手を染め、なんとか売り上げを上げ続けていたが、上司からの当たりはひどく厳しかったという。
「地方支社の上司がパワハラで有名な人だったみたいで。毎日『取るまで帰ってくるな』と詰められていましたが、『東京から来たやり手営業マン』という周りの目もあり、期待に応えたい一心で我慢しながら、がむしゃらに働いたのが、よくなかったと思います」
【発症】朝、涙が止まらない。心が折れた結果、仕事中に失踪……
ある日、積み重ねてきた自爆営業による借金が100万円を超え、会社のコンプライアンス部門にバレてとがめられたことで、とうとう島田さんの心は折れてしまう。
「次の日の朝、起きたら涙が止まりませんでした。仕事に穴をあけるわけにはいかないと、休まずに無理やり出社しました」
午前中は同僚となんとか仕事をこなした島田さんだが、昼食を食べたあとに異変が起こる。
「突然動悸が激しくなり、頭が真っ白に。本能的に『このままではヤバい』と思い、無意識に会社を飛び出していました。連れ戻されると思ったのか寮に戻らずそのまま新幹線に乗り、気がついたら別の都市で降りていました」
数時間ぶりに携帯の電源を入れると会社から大量の着信が。当然戻れるような精神状態ではないので実家に帰り、そこから3か月間休職することになる。
「診断結果は適応障害。それもあってストレスがある環境から離れたら、体調も順調に回復して復職できました。さすがに支社じゃなく本社に出戻りでしたが」