R-30

何かに目覚めちゃった人たちは、なぜエスカレートしていくのか?

思想信条から趣味、嗜好など、人は変わる。人との関係性もまた、変わりゆく。とはいえ、親しい人が突如、予想だにしなかった“変革”を遂げたとき、その変化を受け入れられるのか? 嫌いになれたら楽だが、嫌いになるのも難しいのである

◆“人生のシンプル化”という目覚めのメリット

 なぜ、人は目覚めるのか? いや、何かにハマること、主義主張を持つことは決して悪いことではない。が、なぜ、エスカレートしてしまうことが多いのか?

春日武彦氏

春日武彦氏

 精神科医の春日武彦氏は「目覚めには、人生がシンプルになるというメリットがある」と解説する。

「人にとって、どうにもならないある問題を抱えているときと、問題がいくつも取っ散らかった状態のときと、どっちがツラいかというと、キツいのは後者です。物事はなんでも一挙に解決できるものではありませんが、立ち向かう敵をひとつにできれば、本人としては手応えがあるし、楽になれる」

 いわば、債務整理のようなもの。そして、それにのめり込んでいくのも自然の流れだそう。

「宙ぶらりんだった自分が、自己肯定できるわけですから、ズブズブとハマっていく。だからパートナー側が、それを否定すれば、衝突するのも至極当然なんですよ。本人はそれにすがるほど大変な状態なわけですから、否定すればさらにすがりつく。目覚めたもの、そのものに対して、いい悪いを言っても詮ないことなんです」

 パートナーの立場としては、自分が巻き込まれないように全肯定はせず、一定の距離を保つ。そして、「この人は今、こうせざるを得ない」という寛大な気持ちを持って、泳がせてあげることが大事だという。

 しかし、厄介なのはその影響が外にも出ていくケースもあることだ。

「他人を巻き込むのも、自分を正当化したい気持ちが絡んでいるからです。ここでも肯定しつつ、『ウチではいいけれど、世間さまはいろいろだから、うまく立ち回ってね』と伝える。まあ、そもそもが、それなりに世間で生きていければいいわけですから」

 そうしているうちに、熱は治まるかもしれないし、互いにとっての折り合いが見つけられるかもしれない。それでも暴走が止まらない場合は最終手段もやむなし……。

「本来は目覚めたことで心に余裕が出てくれば、自然とパートナーに対する余裕も芽生えてくるはず。それでも家庭がうまく回らないならば、もしかしたらお互いのズレが顕在化しただけの可能性もある。だとしたら、早いうちに別れるのが得策かもしれませんね(苦笑)」

【春日武彦先生】
’51年、京都府生まれ。精神科医。都立松沢病院部長、都立墨東病院精神科部長を経て、現在も臨床に携わる。著書に『「キモさ」の解剖室』、『様子を見ましょう、死が訪れるまで』など

取材・文/目覚めのとき取材班 イラスト/佐藤ワカナ
― 「ツレが○○に目覚めたとき」の傾向と対策【6】 ―

「キモさ」の解剖室

世界初、「キモさ」の9分類表を携え、その本質を鷲掴む、恐るべき書


様子を見ましょう、死が訪れるまで

白旗&灰田コンビが、最新の精神医学的知見を元に驚くべき手つきで解決していく現代のスーパー奇譚集!!




おすすめ記事