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日本からはまだ見れない!WWEネットワークってなに?――「フミ斎藤のプロレス講座」第4回

―「フミ斎藤のプロレス講座」第4回 ―
WWE Network logo

(C)2014WWE Inc,All Rights Reverved

 WWEネットワークってなに、なんていったら熱狂的なWWEユニバースから怒られてしまうかもしれない。そもそも、WWEユニバースとはいったいなんであるかがよくわかっていない読者もたくさんいるだろう。WWEユニバース(WWEの宇宙)とは“世界じゅうのWWEファンのみなさん”という――アメリカ型グローバリゼーション的発想の――ひとつのコンセプトである。  WWEネットワークとは全世界同時発信のストリーミング動画配信サービスで、WWEそのものがひとつのメディアになったものと考えるとわかりやすい。キャッチフレーズは“エブリウェア・オン・エニイ・デバイスEverywhere on Any Device”。エニイ・デバイス(どんな機種)からでも、エブリウェア(あらゆるところ)からアクセスできる動画配信サービスだ。どんなデバイスが使えるのかというと、パソコン、スマートフォン、PS3、Xボックス360、XボックスONE、スマートフォン対応の各種スマートTVなど。動画を観ることができるネットワーク・デバイスならだいたいなんでもOKだという。  WWEネットワークが“24時間営業”で配信する動画番組は“レッスルマニア”“サマースラム”などをはじめとするPPV年間12イベント、WWEがプロデュースした過去のすべてのPPVアーカイブ(オン・デマンド方式)、“NXT”“レジェンズ・ハウス”“レッスルマニア・リワインド”“マンデーナイト・ウォーWWE対WCW”などのオリジナル番組、WCW/NWA、ECW、AWA、ダラスWCCW、NWAフロリダ、MSWAといった70年代、80年代のプロレス団体の映像アーカイブだ。  WWEの“看板”TVショーである“マンデーナイト・ロウ”と“スマックダウン”の2番組については、WWEネットワークが各番組の前後にそれぞれ30分ワクのプレ・ショーとフォローアップ・ショーを配信するほか、“ロウ”“スマックダウン”本編のディレー版も配信している。  WWEネットワークの受信契約料は月額9ドル99セント。“ロウ”“スマックダウン”の両番組内では実況アナウンサーのマイケル・コール、カラー・コメンテーターのジェリー・ローラーがさかんに“ナイン・ナインティー・ナイン!”と連呼し、その宣伝につとめている。アメリカ国内でWWEネットワークの動画配信サービスがスタートしたのはことし2月からで、その契約者(世帯)数は8月10日現在で約70万件を突破した。  月額9ドル99セントの受信料が適用される動画配信エリアは当初、アメリカ国内だけに限定されていたが、サービス開始から3カ月の時点でカナダ、イギリス、ヨーロッパからの受信契約が全体の30パーセント以上に達した。公式には配信エリアになっていないイギリスと西ヨーロッパからのアクセスが急速な伸びをみせたのはWWEにとっても想定外の展開だった。基本的にはインターネット上の動画配信サービスだがら、プロバイダーとプロバイダーのアクセス・ポイントを何度か“迂回”すれば、アメリカ以外の国と地域からでもわりとかんたんにWWEネットワークにアクセスできるということだ。  WWEはこの8月第3週から“世界170カ国に同時配信”という新しいキャンペーンをスタートし、もともとの事業計画では来年度からの“開局”を予定していたカナダ、イギリス、オーストラリア、ニュージーランド、メキシコ、スペイン、ノルウェー、スウェーデン、デンマーク、フィンランドでの動画配信サービスを正式に開始。アジアでは韓国、香港、台湾、シンガポールがこのラインナップに加わった。  WWEがリリースした“世界170カ国”の国名(と地域名)にはアルファベット順で“A”のアルゼンチンから“V”のベネズエラまでがリストアップされているが、“J”の欄にはいまのところ“Japan”は記載されていない。つまり、日本は――あくまでも現時点では――WWEネットワークの配信エリアにはなっていない。日本と同じようなケースでは中国、インド、タイ、フィリピン、ドイツ、イタリア、スイス、UAE(アラブ首長国連邦)、サウジアラビア、カタール、エジプト、イラクといった国々も“世界170カ国”のリストから外されている。  ところが、ひじょうに不思議というか、奇妙なことにここ2週間ほどのあいだに日本国内のネットの画面には“WWEネットワーク9ドル99セント”というポップアップ広告がひんぱんに現れるようになった。この広告画面を左クリックするとWWE公式サイト(アメリカ版)に移動し、さらに画面をクリックしながらWWEネットワークの“玄関”までたどり着くと、サンドストームの画面に「あなたが視聴しようとしているビデオは、あなたがお住まいの国、または地域からは観られません」という“注意書き”が表示される。つまり、ネット上で広告を出しているにもかかわらず、じっさいには日本からはWWEネットワークにはアクセスできないようになっている。  月額9ドル99セント(日本円で約1000円)という受信契約料は、これまでケーブルTVとCS(衛星放送)がプラットホームとなって有料放映してきたPPV番組よりも価格的にはかなり割安で、このセット料金で“レッスルマニア”をはじめとする有料プログラムがすべて視聴できるというシステムは画期的であると同時に、既存のケーブル局、衛星チャンネルにとっては大きな脅威となることもまちがいない。
斎藤文彦

斎藤文彦

 WWEネットワークの日本における正式なサービス開始の時期についてはまだ未定。このあたりがアメリカが考えるところの“日本市場”の微妙な立ち位置ということになるのかもしれない。WWEネットワークが配信するすべての番組に日本語の字幕スーパーをつけることはおそらく不可能だから、動画配信サービスがスタートしても番組そのものは英語版のみとなる可能性が高い。また、ネット上のストリーミング映像のため、番組配信中に映像そのものに技術的な障害が生じる可能性もまだ残されているという。  “ロウ”と“スマックダウン”の2番組は、日本国内ではことし1月からようやく生中継放送(Jスポーツ=スカパー)がスタートし、月イチのPPV特番もこれまでの3週間のディレー放映から“現地初回放送から3日後”という変則シフトになった。  それにしても、“プロレス先進国”――あるいはネット先進国――だったはずの日本が、いつでもどこでもどんなデバイスからでもアクセスできることが売りもののWWEネットワークにアクセスできないのはなぜだろう? 文責/斎藤文彦 イラスト/おはつ ※斎藤文彦さんへの質問メールは、こちら(https://nikkan-spa.jp/inquiry)に! 件名に「フミ斎藤のプロレス講座」と書いたうえで、お送りください。 ※このコラムは毎週更新します。次回は、9月2~3日頃に掲載予定! ※斎藤文彦氏からハルク・ホーガンにインタビューしている『俺のプロレス』が8月30日に創刊!! 8月30日発売の大人のプロレスマガジン『俺のプロレス』(扶桑社刊)では、表紙&特集でハルク・ホーガンを大フィーチャー。日本でのリングでの思い出話やプライベートでのあれこれまで、プロレスファン胸アツな内容をお届け。テリー・ファンク、スタン・ハンセンなどのインタビューも掲載
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