Uber Eats配達員、「受けキャン」で仕事を干される?
僕は普段、日雇い派遣などの仕事で稼ぎつつ、時間を見つけてはタイなどの東南アジアを中心に旅してきた。この状況では海外旅行には行けそうにないが、日本国内ならば比較的自由に動けるようになってきている。旅がしたい。でも、社会の底辺で生きる僕にはお金がない。そこで「Uber Eats」の配達で稼ぎながら国内を自転車で旅するという方法をとることにしたのである。
旅に出て103日目、僕は鹿児島にいた。この日がウーバーの配達初日だったのだが、稼ぎは少し厳しめだった。大型商業施設の中に入った店舗からの配達リクエストを受けたときのことである。その店の商品受け取りのルールとして次のようなことが書かれていた。
自転車は○○に入って右側の△△に止め、駐輪時間は20分以内。その後、□□から××側の階段を上がり、@@に繋がる連絡通路に移動。&&の前から店に電話する。スタッフが商品を持っていくのでそこで待機すること。館内への立ち入りは禁止。以上のルールを守らない配達員は次回からの取り引きを停止する。
なんだ、これ……? 僕は首を捻ってしまった。この商業施設にはまだ一度も行ったことがなかったので、書かれていることがさっぱり理解できなかった。少し迷ってからこの配達はキャンセルすることにした。すると、それから他の店の配達リクエストもパタリと入らなくなってしまった。
配達リクエストを一度受けてからキャンセルするこの行為は配達員の間で「受けキャン」と呼ばれている。まさかこれを一度したくらいで仕事が干されるなんてことはないはずなのだが……。
104日目は配達開始早々にこの店からの配達リクエストが入った。鹿児島でウーバーの配達をするうえでこの店は避けて通れないのかもしれない。そこで嫌々ながらもリクエストを受けてみることにした。店の近くまで来たところで店に電話した。
「お電話ありがとうございます。○○鹿児島店です」
応じたのは若い女性スタッフだった。
「ウーバーですけど、そちらのお店のルールがさっぱり理解できないんですけど!」
「今どちらにいらっしゃいますか?」
「キッチンカーのある広場です」
「そうしましたら……」
そのスタッフは商品受け渡し場所までの行き方を丁寧に教えてくれた。そのおかげでそこまでは簡単にたどり着くことができた。
僕に商品を手渡すときには「お疲れ様です。配達よろしくお願いします」と言って深々と頭を下げる。校則の厳しい学校の先生がたいがい嫌な奴であるのと同じように、ルールの厳しいこの店のスタッフも嫌な奴なのではないかと思っていた。が、それも完全に僕の思い過ごしだったようである。
以後、僕はこの店からの配達リクエストを積極的に受けるようになり、鹿児島で順調に稼げるようになった。
受けキャンで仕事を干される?
じつは丁寧な店だった!
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バイオレンスものや歴史ものの小説を書いてます。詳しくはTwitterのアカウント@kobayashiteijiで。趣味でYouTuberもやってます。YouTubeチャンネル「ていじの世界散歩」。100均グッズ研究家。
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