12月3日から「障害者週間」。障害者雇用の現場から見えた経営の難しさと企業の挑戦
12月3日は国連によって「国際障害者デー」と制定され、日本では毎年12月3日から9日までの1週間を「障害者週間」とし、さまざまな取り組みが展開される。
近年、障害者雇用への関心は高まり、企業による取り組みも注目を集めている。日本では、障害者雇用促進法に基づき障害者雇用率が定められており、これまでの2.3%から2024年4月からは2.5%に引き上げられ、2026年にはさらに2.7%と引き上げられることが決まっている。
例えば「ユニクロ」を展開するファーストリテイリングでは「国内の店舗においては1店舗1名以上の障がい者を採用する」という目標を2001年に掲げ、国内にある約1200のユニクロとGUのほぼ全店舗で障がい者が働いているという。
ファーストリテイリングのグループ全体では障害者雇用率は約4.9%で、法定雇用率の2.5%を大きく上回っている。日本だけでなく、グローバルにも障害者雇用を促進しており、積極的な姿勢だ。
こうした障がい者を積極的に雇用するさまざまな取り組みは、多様性の重視やダイバーシティを促進する働き方改革の一環としても重要で、障がい者が安心して働ける環境づくりに貢献している。
一方で、障がい者を雇用する難しさもある。民間の援助付き雇用のひとつに「就労継続支援」という制度があり、一般企業に就職することが困難な障がい者が働くことを支援する福祉サービスがある。最終的には一般企業での就労を目指すことを念頭に置き、障がい者に最低限の就労に関するスキルや技能を身に着けることを目的としている。
就労継続支援の事業所は「A型」と「B型」に分かれ、A型とB型の大きな違いは「雇用契約の有無」と「作業内容」だ。
A型では事業所と障がい者が雇用契約を結び、最低賃金以上の給料を受け取ることができる。一方で、B型は雇用契約がなく、作業に応じた工賃を支払う形になる。
A型もB型も、障がい者が働くことで社会とのつながりを感じ、やりがいを得られる場を提供することが目的で、一般就労に向けての通過点といった要素もある。
ところが近年、就労継続支援A型の事業所の倒産が増加しており、一部の事業所はB型へと移行する動きがある。この傾向の背景には、A型の厳しい経営状況がある。
A型では利用者に賃金を支払う必要がある。しかし、その財源を確保するための収益性の高い事業展開の難しさなどもあり、経営を圧迫しているからだ。
一方、B型事業所は賃金支払い義務がないため運営負担が比較的軽減されており、A型からの移行先として注目されている。しかし、B型では工賃が安いため、障がいを持つ利用者を集めるのに苦心している事業所も多い。
今回、福岡県内で就労継続支援B型の事業所を運営する株式会社S&Tの代表、川上佐智子さんに話を聞いた。川上さんは、自身が経営する企業や飲食店で、障がいを持つ利用者を雇用している。介護・福祉サービス、障がい者の働く現場に迫った。
川上さんは自ら経営する会社で障がい者を事務員として雇ったり、飲食店のスタッフとして雇っている。「社会復帰を目指す訓練の場」として、働く環境を提供しているという。
「就労継続支援B型を利用する40名くらいの障がい者を雇っています。例えば、車椅子だけど手は動かせる方だと折り込みチラシの封入作業をしてもらったり、知的障害の方に鳥焼き屋で肉のグラム数を計ってもらったり、障がいの重さなどによって仕事内容は相談しながら決めています。
一般的な企業で働きにくい方にはまずはそこで訓練してもらい、仕事をする意欲を持ち、少しでも工賃をもらって自分で稼いでいる喜びを感じてほしいと思っています」(川上さん)
川上さんは小学校のときに障がいを持つYちゃんという女の子と同じクラスになったのがきっかけで、福祉関係の仕事に興味を持つようになったという。
「Yちゃんは重度の身体障がいがあり、車椅子を使用していました。当時通っていた学校には特別支援学級はまだなく、Yちゃんは通常学級で学んでいましたが、他のクラスメイトはYちゃんを避けがちで、周りの理解は十分ではなかったと思います。
でも私は『Yちゃんも私たちと同じ仲間』と思っていて、Yちゃんとの関わりを通して、福祉の大切さ、福祉教育の必要性を感じるようになったんです。
人のお世話をするのがもともと好きだったというのもあって、困っている人を助けたい、誰かのためになりたいという気持ちが強かったのかなと思います。
Yちゃんとの出会いがきっかけとなって、『障がいのある人々の支援に携わりたい』という想いが芽生えました」(川上さん)
◆障がいを持った人が働くことを支援する「就労継続支援」
◆障がいを持つ人への周囲の理解が十分ではなかった
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