タイのクーデター、街や住民は意外と平穏!?
5月22日、タイ陸軍が2006年以来8年ぶりにクーデターを宣言した。
反政府デモ活動が下院解散総選挙を拒否・妨害し、タイ憲法裁判所によるインラック首相の違憲判決で退陣に追い込まれた。これを国家的な危機と判断した陸軍が5月20日未明に戒厳令を発出。話し合いを促す仲介役のはずが、22日夕方、突然タイの全権掌握を宣言し、クーデターとなったのだ。
2006年以降、この政治混乱になにかと首を突っ込んできた軍が、昨年9月からの反政府活動には動かなかった。それがなぜ今になって動いたのか。タイ人でさえも「?」となっている。
タイを知らない方からすると、さぞやタイ国内も混乱していると想像されているだろう。実際のタイは、今のところではあるが、平穏である。
とはいえ、それなりに混乱はある。
クーデター宣言の22日夕方から陸軍に全テレビ局およびラジオ局が押さえられ、陸軍広報から意図的に出される情報しか手に入らなくなった。
タイではフェイスブックの普及率が非常に高く、多くのタイ人や在住外国人はネットでの情報収集をしたが、結局それが本当であるかどうかの確認のしようがなく、混乱は続いていた。
陸軍から発せられた夜間外出禁止令が22時~5時とのことだったが、これがマジの禁止令なのかどうか、という点すら最初はわからなかったのだ。
なにしろ、2006年以降のタイでは反政府デモが繰り返され、そのたびに外出禁止令が出るが、2010年の赤シャツ隊によるデモの終盤の禁止令以外はわりと自由に出歩くことができていたからだ。
また、各地で銃撃戦が始まっているという情報や深夜便で空港に到着した旅行者は空港待機だという噂もあったし、フェイスブックでクーデターに関する書き込みをしたら逮捕されるという噂までタイ人の間では流れており、情報が錯綜していた。
こういったケースで正確な情報は、NHKやCNNなど、外国のテレビ報道機関のニュースが早く確実だ。しかし、衛星放送もシャットダウンされ、信頼できる情報源はどこにもなかったのである。
バンコクの電車も21時前後には終電となり、コンビニもギリギリの21時半くらいまで。飲食店も軒並み今回の外出禁止令に従うこととなった。
22日のバンコクは、22時以降、普段からは考えられないほど静かな街になったのだった。
そして、一夜明けた、5月23日。
朝の通勤ラッシュは土日の朝方並み……すなわち道路も空いているし、電車もガラガラだった。全学校の休校措置と、企業も様子見で臨時休業にしたところが多かったためだ。
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では、市民はおとなしく自宅待機しているのかというと、そうでもないようだ。なにしろ、8年ぶりとはいえ19回目のクーデターである。この手の騒乱に慣れてしまっているためか、デパートなどに出かけ、降って涌いた休日を確実にエンジョイしている。平日の昼間はそれほど人がいなかった商業施設も土日並みの賑わいだ。
ただ、相変わらず情報はシャットダウンされている。テレビは無音のまま同じ画面を流し続けている。衛星放送も見られない。旅行者のフェイスブックの書き込みを見ると空港待機はデマだったようだ。また、陸軍広報も銃撃戦はなかったと伝えている。ただし、それが本当なのかどうかはわからないのだが……。
そして、23日も夜間外出禁止令が継続された。日本人経営のバーは営業時間をずらして、昼から21時ごろまでの営業と苦肉の策を打ち出しているところもある。
今後タイがどのように動いて行くのか、まだクーデター2日目で情報が出ていない中では判断がつきにくい。これまでは現在の反政府側に加担する傾向にあった軍だが、現在、両陣営の幹部を拘束中だ。インラック元首相にも出頭命令を出している。おそらく数日中には軍がどうしていくのかが見えてくることだろう。
<取材・文・写真/高田胤臣 写真/Samurai x TPL 深田耕一>
- 普段は大渋滞のスクムビット通りも空いている状態(撮影:Samurai x TPL)
- 土日の朝並みの乗車率となっている(撮影:Samurai x TPL)
- バンコク市内のデパートはそれなりの人出。クーデターによる”休暇”と捉えているようだ
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