日本の乱獲が原因で減ってしまった魚たち――水産資源を守るために必要なこと
漁獲量が激減しているの日本の漁業。水産庁はサンマやスケトウダラなど7種目に漁獲可能量の上限を設定しているが、実質的な意味はないも同然。水産資源を守るために必要なこととは?
◆日本の乱獲が原因で減ってしまった魚たち
太平洋クロマグロやマイワシ、サバ、アジ、ホッケなどといった魚は日本近海に産卵場を持っており、環境変動で一時的に減少することもあるが、国内で適切な漁獲規制をすれば持続的に利用できる資源である。
「’04年以降、最新鋭の魚群探知機を使い、産卵期のクロマグロを一網打尽にする巻き網漁が日本海で行われるようになりました。その結果、マグロの資源量が大幅に減ったことは乱獲が原因となる顕著な事例です」(水産資源問題に詳しい、勝川俊雄・東京海洋大学准教授)
同様に日本近海で産卵をし、成長する前に獲りすぎてしまったマイワシ、サバやアジ、ホッケなども大きく漁獲量を減少させた。これらを扱う漁師からは、
「一回の漁に出る時間を2~3倍に増やしても、かつての半分も獲れない。収入が減って陸に上がった(廃業した)連中も多い」(青森の漁師)
「ホッケは漁獲量が10年で8割も減った。漁価は上がったが年収は半減した」(北海道の漁師)
などの悲鳴も聞かれる。
◆国が指導して漁業の仕組みを変えるべき
現状、日本では規制やルールが形骸化しており、自主的に漁獲量を抑えることは難しい状態にあるという。
「自主規制は利用する漁業者全員が顔見知りの小規模な資源には有効です。一方で、県をまたいで回遊する大規模資源は、利用者全員が集まって話し合う場すらないのだから、自主規制では守れません。国が責任を持って規制をする必要があります。手本となる国はいくつもあるわけですから参考にすればいい。少し魚を食べる量を我慢する必要はあるかもしれませんが、今ならまだ間に合います」(勝川氏)
人の手で獲りつくしてしまったものは、人の手で取り戻していかなくてはならないのだ。
取材・文/高島昌俊 八木康晴(本誌) 取材・撮影/青山由佳 取材/森 祐介 写真提供/焼津漁業協同組合(一部)
― 世界で[日本の漁業]だけが衰退している!―


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