東芝が抱える「中国原発」という爆弾
「エネルギーとエレクトロニクス」の東芝が、まさか自らのエネルギー事業で首を絞められることになろうと誰が想像しただろうか……。しかし、原発事業での失敗はアメリカだけではなかった。情報が乏しい中国での事業こそパンドラの箱だった!
2月に東芝は子会社の米国ウェスチングハウス(以下、WH社)による7000億円もの特別損失を計上し、昨年末には債務超過に陥っていた。福島原発の事故で安全基準が見直され、工期の遅れやコストが上昇したことが要因だ。
上場廃止を免れるため、目下、事業の売却による資本拡充が検討されているが、WH社はさらなる爆弾を抱えている。同社は中国・浙江省の三門原発と山東省の海陽原発で計4基の原発炉建設を受注しているが、いずれも工期が3年以上遅れることが確定しており、WH社が巨額の損失を被っている可能性が高いのだ。
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この損失はあらかじめ東芝は認識していた。『文藝春秋』(’16年4月号)は、’13年に当時の東芝財務部長のW氏が送ったとされるメールをスクープした。そこには「中国・USのAPプロジェクトは大きな問題を抱えている」と書かれており、監査法人から「失注扱い」するよう指摘を受けたことが綴られている。このW氏は、東芝の不正会計が明らかになった後の’15年9月、決算発表の席上で東芝の好調ぶりを力説していた人物だ。それが単なる強弁だったことは今や明らかだが、同記事から3年以上たち、膨らみ続ける中国事業の損失も、彼の手によって隠されているのでは、と疑ってしまうのは人の常だろう。
中国での工期の遅れも、やはり安全基準の見直しが原因だ。中国事情に詳しいジャーナリストの富坂聰氏はこう話す。
「三門原発ではかつて、原子炉からわずか数百メートルという距離に従業員宿舎が造られていた。それほど原発に対する危機意識は低かったが、福島原発事故で一変した。一党独裁とはいえ住民反対運動も無視できるレベルではなくなったのも原因です」
東芝は3年前から中国での事業をヤバいと認識!?
1980年、愛媛県生まれ。上智大学経済学部卒。ニューヨーク市立大学中退後、中国に渡り、医療や知的財産権関連の社会問題を中心に現地取材を行う。2008年に帰国後は、週刊誌や月刊誌などに寄稿しながら、「国家の政策や国際的事象が末端の生活者やアングラ社会に与える影響」をテーマに地道な取材活動を行っている。2016年に他に先駆けて『週刊SPA!』誌上で問題提起した「外国人による公的医療保険の悪用問題」は国会でも議論の対象となり、健康保険法等の改正につながった。著書に『中国「猛毒食品」に殺される』(扶桑社刊)など。最新刊『ルポ 新型コロナ詐欺 ~経済対策200兆円に巣食う正体~』(扶桑社刊)発売
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