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サブゥーの“魔法のじゅうたん”はいまどこ?――フミ斎藤のプロレス読本#117【ECW編エピソード09】

 ニューヨークはじつは広い。マンハッタンそのものはトーキョーでいうとちょうど世田谷区くらいの大きさだけれど、アッパー・ステートと呼ばれているニューヨーク州北部は地球のてっぺんに向かって道だけの道がずっとつづいている。  サブゥーが“魔法のじゅうたん”を走らせていたロッチェスターは、オンタリオ湖に面したニューヨーク北西部の小都市。そのまま1時間ほど西に戻るとナイヤガラの滝にぶつかる。オンタリオ湖の向こう側はカナダだ。  ECWの活動テリトリーはいちおうイーストコースト全域ということにはなっているが、じっさいはツアー・コースらしいツアー・コースなんてない。  エグゼクティブ・プロデューサーのポール・ヘイメンがFAXで送ってくる手書きのスケジュール表には町の名と体育館のアドレスだけが記されている。リングが組み立てられたその場所を探しあてるのはボーイズの仕事である。  じっさいにリングに上がっている時間よりも“魔法のじゅうたん”に乗っかっている時間のほうがはるかに長い。携帯電話とビーパー(ポケベル)を持って歩いているといっても、広いアメリカではポータブルの通信機器のキャパシティーがすぐに“エリア圏外”になってしまう。  そうなると“魔法のじゅうたん”はタコ糸が切れたタコみたいなものだ。だから、サブゥーとサブゥーの移動型ドレッシングルームはしょっちゅう“音信不通”になってみんなを心配させる。  サブゥーにとって、クルーズマスターでの旅とプロレスの試合とはワンセットのアイテムである。背骨にはヒビが入ったままだし、持病になってしまったケイ椎の状態もそんなによくない。  あと10年、プロレスをつづけられますかと聞かれたら、たぶん、答えは「NO」だろう。でも、“魔法のじゅうたん”に乗っていると、目のまえに広がるフリーウェイの旅はまだまだずっとつづくような気がしてくる。  携帯電話のスウィッチなんて切っておいたほうがいいときもある――。 ※文中敬称略 ※この連載は月~金で毎日更新されます 文/斎藤文彦
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