ジョージ・ゴーディエンコ マッカーシズムに消された男――フミ斎藤のプロレス講座別冊レジェンド100<第27話>
世界チャンピオンになるべき実力を持ちながら、アメリカのプロレス史の表舞台に登場することなく消えた悲劇のレスラーである。
ジョージ・ゴーディエンコは第二次世界大戦後の1946年、カナダ・ウィニペグのYMCAでミネアポリスのプロモーター、トニー・ステッカーTony Stecherとウォーリー・カルボWally Karboにスカウトされ、戦前の大レスラー、ジョー・パゼンダックJoe Pazandakのコーチを受けた。
ステッカー、カルボ、パゼンダックの3人は18歳だったゴーディエンコをミネソタ州ミネアポリスに連れてきて、将来のレスリング・ビジネスを背負って立つべき“金の卵”としてプロレスの英才教育をほどこした。
バーン・ガニアのAWAが誕生する15年もまえのことだ。ゴーディエンコはそれほどケタはずれにレスリングが強く、ナチュラルに体が大きく、人間ばなれした怪力の持ち主だった。
ゴーディエンコは大学への進学を望み、昼間はミネソタ大学の学生、夜はレスリングの練習とウエートトレーニング、週末はプロレスラーという生活を約3年間つづけた。
しかし、予期せぬ事件が起きる。ミネソタ大在学中にキャンパスでコミュニズム=共産主義のビラを配り、政治デモに参加したことでアメリカから国外退去処分となってしまった。
ゴーディエンコの恋人が左翼運動家で、ゴーディエンコも共産党の党員になっていた。“マッカーシズム=赤狩り”の時代だった。
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