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サージャント・スローター “鬼軍曹”のアップダウン――フミ斎藤のプロレス講座別冊レジェンド100<第69話>

サージャント・スローター “鬼軍曹”のアップダウン<第69話>

連載コラム『フミ斎藤のプロレス講座別冊レジェンド100』第69話は「サージャント・スローター “鬼軍曹”のアップダウン」の巻(Illustration By Toshiki Urushidate)

 WWEがプロデュースした海軍海兵隊Marine Corpsキャラクターである。  6フィート3インチ(約191センチ)、280ポンド(約127キロ)の巨体とたぐいまれな運動センスを高く評価され、デビュー当時から将来のスター候補といわれたが、素顔がひじょうに地味だったためリングネームとキャラクター変更をくり返し、最後に“鬼軍曹”サージャント・スローターにたどりついた。  ミネアポリスの“バーン・ガニア道場”でレスリングを学び、1974年にAWAでデビュー。  リングネームは本名のボブ・リーマス、ボビー・スローター、“スーパースター”スローターとマイナーチェンジをくり返し、1978年にホームリングのAWAでマスクマンのスーパー・デストロイヤー・マークⅡに変身した。  これがメインイベンターとして最初のブレイクとなり、1980年9月にWWEと契約。ビンス・マクマホン・シニアが“鬼軍曹スローター”というキャラクターを考案し、ボブ・バックランドの新チャレンジャーに抜てきした。  1980年代前半、スローターは“使い勝手のいい大型ヒール”としてバックランド、アンドレ・ザ・ジャイアント、パット・パターソン、ペドロ・モラレスらとシングルマッチ・プログラムを展開。  “反米”アイアン・シークとの因縁ドラマでベビーフェースに転向したが、“1984体制”がスタートしたWWEでビンス・マクマホンと衝突し、1984年12月に戦力外通告を受けた。  “鬼軍曹”スローターはハルク・ホーガンと並ぶベビーフェースの人気者だったが、所属レスラー200人の大所帯となったWWEでスローターとジェシー・ベンチュラのふたりが“労働組合”を組織しようとした。これが突然の解雇の理由だった。  このとき、“プロレスラー労組”が組織されていたらその後のプロレス史はちがったものになっていたかもしれないが、スローターの運動はレスラー仲間から賛同を得ることができなかった。プロレスラーは、基本的に“個人事業主”の集団だった。  古巣AWAに復帰したスローターは、ガニアに“スローター軍曹”のキャラクター・グッズの商品展開と印税のロイヤリティー契約を団体サイドに求めたが、ガニアはスローターのアプローチを「ニューヨークのビジネスに毒された」ととらえた。  AWAは大企業ではなくて昔ながらの“プロレス一座”だった。WWEとAWAでは“労働条件”があまりにもちがいすぎた。  スローターは“組合運動”から9年後、“イラク軍の軍曹”としてWWEに復帰し、アルティメット・ウォリアーを下しWWE世界ヘビー級王座を奪取(1991年1月19日=フロリダ州マイアミ“ロイヤルランブル”)。  “レッスルマニア7”のメインイベントでハルク・ホーガンと対戦した(1991年3月24日=カリフォルニア州ロサンゼルス)。  アメリカ対イラクの“第一次・湾岸戦争”の時代で、WWEは確信犯的に“時事ネタ”をプロレスのリングにアダプトした。  アメリカ海兵隊の鬼軍曹キャラクターからイラク軍人キャラクターへの変身は、いかにもビンスが思いつきそうなアイロニーの表現ということになるのだろう。  スローターとビンスは和解し、“スローター軍曹”はWWEのリングで現役生活を終えた。  引退後はエージェントに転向してTVショー“マンデーナイト・ロウ”“スマックダウン”のアシスタント・プロデューサーをつとめた。ひと世代若くなったレスラー、スタッフからは“サージ”というニックネームで親しまれた。 ●PROFILE:サージャント・スローターSgt.Slaughter 1948年8月27日、ミネソタ州ウィルマー出身。本名ロバート・リーマス。1974年、AWAでデビュー。マスクマンのスーパーデストロイヤー・マークⅡを経て、1980年、WWEで“スローター軍曹”に変身。1984年にWWEを退団するが、1991年に復帰。U・ウォリアーを下してWWE世界王座を獲得し“レッスルマニア7”でホーガンと対戦。必殺技はコブラ・クラッチ。現在はWWEエージェント。 ※文中敬称略 ※この連載は月~金で毎日更新されます 文/斎藤文彦
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