更新日:2018年04月04日 18:53
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慰安婦問題に、日本政府が国連で徹底反論。朝日新聞の“捏造”など7つの論点――江崎道朗のネットブリーフィング

慰安婦問題に関する日本政府、7つの反論

 「河野談話」とその「解釈」がどのように見直されるようになったのか。杉山審議官の「見解」に沿って説明しよう。  第1に、日本政府としては懸命に調べたが、慰安婦の「強制連行」を立証する資料は見つかっていない。「強制連行があったとする証拠はない」が、日本政府の正式な見解なのだ。 《日本政府は、日韓間で慰安婦問題が政治・外交問題化した1990年代初頭以降、慰安婦問題に関する本格的な事実調査を行ったが、日本政府が発見した資料の中には、軍や官憲によるいわゆる「強制連行」を確認できるものはなかった。》  第2に、強制連行されたと言われるようになったのは、吉田清治氏の虚偽証言を朝日新聞が大々的に報じたことが影響しているが、その吉田証言が捏造であったことは朝日新聞も認めている。 《「慰安婦が強制連行された」という見方が広く流布された原因は、1983年、故人になった吉田清治氏が、「私の戦争犯罪」という本の中で、吉田清治氏自らが、「日本軍の命令で、韓国の済州島において、大勢の女性狩りをした」という虚偽の事実を捏造して発表したためである。この本の内容は、当時、大手の新聞社の一つである朝日新聞により、事実であるかのように大きく報道され、日本、韓国の世論のみならず、国際社会にも、大きな影響を与えた。しかし、当該書物の内容は、後に、複数の研究者により、完全に想像の産物であったことが既に証明されている。 その証拠に、朝日新聞自身も、2014年8月5日及び6日を含め、その後、9月にも、累次にわたり記事を掲載し、事実関係の誤りを認め、正式にこの点につき読者に謝罪している。》  第3に、慰安婦は20万人と言われているが、その数字は「具体的な裏付けのない数字」である。 《また、「20万人」という数字も、具体的裏付けがない数字である。朝日新聞は、2014年8月5日付けの記事で、「『女子挺身隊』とは戦時下の日本内地や旧植民地の朝鮮・台湾で、女性を労働力として動員するために組織された『女子勤労挺身隊』を指す。(中略)目的は労働力の利用であり、将兵の性の相手をさせられた慰安婦とは別だ。」とした上で、「20万人」との数字の基になったのは、通常の戦時労働に動員された女子挺身隊と、ここでいう慰安婦を誤って混同したことにあると自ら認めている。》  第4に、「性奴隷」という表現は事実に反する。 《「性奴隷」という表現も事実に反するということをもう一度繰り返しておきたい。書面の回答に添付した[平成28年12月28日の日韓]両外相の共同発表の文書の中にも、「性奴隷」という言葉は1か所も見つからないのも事実である。》  第5に、河野談話での「軍の関与」は、軍による強制連行という意味ではない。 《ここでいう「当時の軍の関与の下に」というのは、慰安所は当時の軍当局の要請により設置されたものであること、慰安所の設置、管理及び慰安婦の移送について日本軍の関与があったこと、慰安婦の募集については、軍の要請を受けた業者がこれに当たったということは、従来から認めていることである。》  第6に、以上のような「見解」に基づいて平成28年12月28日、韓国政府も日韓合意において慰安婦問題が「最終的かつ不可逆的に解決」されることを確認している。 《昨年12月28日、ソウルにて日韓外相会談が開催され、日韓外相間で本件につき妥結に至り、慰安婦問題が最終的かつ不可逆的に解決されることが確認された。同日後刻、日韓首脳電話会談が行われ、両首脳はこの合意に至ったことを確認し、評価をした。》  第7に、戦後補償について日本政府は賠償金を支払うなど誠実に対応してきており、国際条約などによって個人の請求権も含めすべて解決済みである。 《先の大戦に関わる賠償並びに財産及び請求権の問題について(中略)誠実に対応をしてきており、これらの条約等の当事国との間では、個人の請求権の問題を含めて、法的に解決済みというのが、日本政府の一貫した立場である。》  25年前に発表された「河野談話」は朝日新聞を始めとするマスコミ、韓国や中国、一部学者たちによって拡大解釈され、日本は「性奴隷国家」というレッテルを貼られてきたわけだが、「それは間違いだ」と日本政府もようやく、まとまった形で反論したのだ。  「河野談話」撤回まで踏み込まなかったことは不満だが、慰安婦強制連行説や犠牲者20万人説、性奴隷説を全否定した「杉山審議官見解」こそ「日本政府の公式見解だ」と大いに活用していきたいものである。  杉田水脈衆院議員も指摘しているが、外務省はまずこの「見解」をもっと目立つように、外務省のホームページで紹介すべきだろう。また、歴史教科書の記述なども、この「見解」に照らして吟味すべきだ。
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日本政府がアメリカの慰安婦像裁判に「意見書」
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(えざき・みちお)1962年、東京都生まれ。九州大学文学部哲学科卒業後、石原慎太郎衆議院議員の政策担当秘書など、複数の国会議員政策スタッフを務め、安全保障やインテリジェンス、近現代史研究に従事。主な著書に『知りたくないではすまされない』(KADOKAWA)、『コミンテルンの謀略と日本の敗戦』『日本占領と「敗戦革命」の危機』『朝鮮戦争と日本・台湾「侵略」工作』『緒方竹虎と日本のインテリジェンス』(いずれもPHP新書)、『日本外務省はソ連の対米工作を知っていた』『インテリジェンスで読み解く 米中と経済安保』(いずれも扶桑社)ほか多数。公式サイト、ツイッター@ezakimichio

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