枝野幸男氏が「立憲民主党に教条主義的護憲派はいません」と断言。山尾志桜里氏と憲法論は一致――ゴー宣道場レポート
憲法記念日の5月3日は全国で憲法に関する集会が行われた。護憲派から改憲派までさまざまな団体・市民たちが各所に集ったが、東京都目黒区の目黒区中小企業センターホールでは「立憲的改憲」を訴える漫画家の小林よしのり氏が「ゴー宣道場拡大版」を開催した。
立憲的改憲とは「侵略戦争をさせないために権力を縛る、立憲主義に基づいた改憲」を主張する立場で、小林氏は今年に入ってから毎月、憲法学者などを招き、公開の場で憲法についての討議を続けている。
この日は法学者で東京大学教授の井上達夫氏、東京外国語大学国際学研究院教授の伊勢崎賢治氏、衆議院議員の山尾志桜里氏をゲストに迎え、「安倍暴走を立憲主義なら糺せる!」と題して、公開討議が行われた。
「立憲民主党代表の枝野幸男氏がやってくるか」だった。開演前から、枝野氏の名前が書かれた席が用意はされていたが、そこにはパンダのぬいぐるみが置いてあった。
14時に開演すると、まずは小林氏があいさつ。続いて、井上氏が「コスタリカの憲法は平和憲法と言われているが、12条に『軍事力を組織することができる』と書かれており、非武装でも中立でもない。むしろ、立憲的改憲の考え方に近い」と指摘。続いて、伊勢崎氏が日ジブチ地位協定と日米地位協定の問題点を挙げ、それを受けた山尾氏が先日のシリアに対する米英仏による攻撃は「個別的自衛権でも集団的自衛権でもなく、国連の安全保障理事会で承認されているわけでもない、あえて言うならば侵略戦争に近い攻撃だ」と問題提起。議論が白熱したところで、枝野氏が会場に到着した。
枝野氏は「遅れてすいません。今日は憲法記念日なのでいろんなところを飛び回っているのですが、お約束通りきました」とあいさつ。約40分に渡り、安倍改憲への批判と、立憲民主党の改憲に対するスタンスについて熱弁をふるった。
まず、枝野氏は「安倍政権の改憲は、そもそもなぜ変えようとするのか、動機が不純。『憲法によって(権力が)縛られているから、その縛りを少しでも外したい』という話と、『長く憲法が変えられていないから、自分が変えて歴史に名前を残したい』、それ以外に考えられないですね」と安倍政権の改憲スタンスを批判。
小林氏が「立憲民主党で枝野さんが主導して改憲をするならば、立憲主義を貫徹した憲法にするんですか?」と質問すると、枝野氏は「それは立憲民主党じゃなくたって、近代社会では当たり前のはずなんですけど(笑)、その当たり前のことがこの国では共有されていないので、そのためには『立憲主義の観点では本当はこういう規定にしたほうがベターじゃないですか?』というような話をちゃんとしていく」としたうえで、憲法論と政治論が一体化してしまうことの難しさなどを語った。
そのうえで、枝野氏は「政治論としてどういうマネジメントをしたらいいのか。私として幸いだったのは、党首だとやりにくいものを山尾さんが代わりにやってもらえる。私が言ってしまうとそれはそれで、ややこしいことやいろんなことが起きるので、ほぼ憲法論については山尾さんが言うことと私が言うことは一緒だと思っていただいていい。ただ、政治論としてどうするか、ということは別途あるので、そこは役割分担をしながら。政治というのは理想を目指しながら、ワーストを避ける営みです。バランスを取りながら、あるべき論はしっかりと積み重ねていく」と山尾氏の立憲的改憲論を共有していることを明らかにした。
そのうえで「立憲民主党に教条主義的護憲派はいません」と断言。「ただ、政治論として今、立憲的改憲論を高らかに党として打ち上げると、それは安倍さんの思うつぼじゃないですか? 政治論として今どうすべきか、という話については、あえて言えば山尾さんは少数派です(笑)。だけど、それは政治論としてそのタイミングなのかどうかという議論にすぎなくて、あるべき論として(憲法を)『絶対に一言一句変えてはいけない』という立場ではまったくないし、9条についてもまさに立憲的に自衛隊のできること、できないことをきちっと明確にする、と私はずっと言い続けていますし」と、自らの立憲主義改憲に対するスタンスを改めて表明した。
ゴー宣道場は6月2日に東京で、6月10日に福岡で開催される。2日の東京では「保守とリベラルの役割。そして立憲」と題して政治学者の中島岳志氏をゲストに迎える。小林氏は「政治思想をメインに話したい」とのことだが、引き続き立憲的改憲についても討議されると思われる。 <取材・文・写真/週刊SPA!編集部>
今回の注目は日刊SPA!で既報の通り●SPA!創刊30周年イベント「小林よしのり『ゴー宣道場出張版』」開催
6月2日(土) 14時~
ゲスト/中島岳志
師範/小林よしのり、高森明勅、笹幸恵、泉美木蘭、倉持麟太郎
前売1000円/当日1300円
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