安倍政権による改憲は遠のいたのか? 立憲的改憲の立場から倉持麟太郎氏が警鐘を鳴らす
12月10日に閉幕した2018年の臨時国会では、自民党による「改憲4項目」の提示がされなかった。そのため、「安倍政権による改憲の可能性はかなり低くなったのではないか」と言われている。だが、同日の会見で安倍晋三首相は「2020年は新しい憲法が施行される年にしたいと申し上げたが、今もその気持ちに変わりはない」と発言した。
これに対しては、小泉純一郎元首相が「憲法改正なんて自民党だけでできるわけがないよ」「(2019年の参院選で憲法は)選挙の争点にすべきでない」と発言するなど、さまざまな批判が集まっている。
臨時国会が始まる前は2019年夏の参院選(現在では7月21日投開票が有力と言われている)で「憲法改正を問う国民投票」を同時に行うのが「安倍改憲への最短コース」ではないか、との予想があった。そこで、「2国会に渡り審議を尽くした」という形を取るために、臨時国会での改憲案提示が予測されていたわけだが、憲法審査会は野党の審議拒否により職権で1回、2分だけ衆院のみで開催されただけ、という状態だ。
この現状を「護憲派の勝利」と見る向きもあるようだが、果たして本当に改憲の可能性はなくなったのだろうか? また、安倍首相が「2020年新憲法施行」にこだわるならば、考えられる新たな改憲へのスケジュールはどうなるのだろうか?
「安倍改憲の発議のタイミングはいつか、という予想が当たるだの外れるだのの話がよくありますが、我々の日常業務がまさにそうですが法律家としてのスタンスとしては、『ワーストシナリオがきたときに、どう対応するのがベストか?』ということを考えなければならないのです。だから、今の段階で『終わった』とか『勝った』と言うのもいいのですが、法律家としては『今度の通常国会での発議も論理的にはありえる』ということを前提に動かねばなりません。改憲発議に必要な3分の2議席以上を与党が占めている。そして『2国会をまたがなければいけない』というのも別に明文のルールではないわけですから。また、通常国会で発議がなかったとしても、参院選で3分の2を与党が取ればどうなります? 『その可能性は低い』という人も多いですが、これもまたワーストシナリオを考えておかなければいけません」
そう語るのは弁護士の倉持麟太郎氏だ。彼は立憲民主党の山尾志桜里議員の政策顧問を務め、12月12日に『ゴーマニズム宣言 2nd Season』第1巻を上梓した漫画家の小林よしのり氏が主宰する『ゴー宣道場』という公開議論の場で「師範」というレギュラー講師のような役割を果たしている。そして、小林よしのり氏は2017年の秋頃から山尾議員、倉持氏らと共に「立憲的改憲」を打ち出し、安倍政権の改憲の問題点を数多く指摘してきた。
「もちろん、これまでの政治常識で言えば、安倍政権による改憲の可能性は極めて低くなっている、と言ってもいいでしょう。ただ、安倍政権は、例えば今回の臨時国会で憲法審査会を『職権』で開催したようにこれまでの政治常識が通用しません。議会の回し方にしても『なんだ、明文で職権はダメって書いてないんだ。じゃあ、職権でやろうよ』と。いつしか、それがルールになっていきますよ。『これ、できそう?』『多分、ダメって書いてないからできます』みたいなことが横行してしまっている」
従って、「ワーストシナリオ」が消えるまでは対応し続けなければいけない、と倉持氏は語るが、そもそも彼らが「立憲的改憲」を主張するのは「安倍改憲に対抗するためだけではない」という。
「まず、先ほど申し上げたような状況は、安倍首相が退陣しても変わらないでしょうね。次の自民党総裁だって、まったく同じマーケット(支持層)を引き継いで、同じことをすると考えるのが合理的でしょう。だって、政権担当する権力当事者にとってあんなに合理的にこれまでのルールを変更できたり創り出したりする方法を見いだしたのなら、踏襲すると考えるのが合理的だしリスクヘッジです。
特にリベラル勢力は、本来権力に懐疑的であるはずなのに、安倍政権という特定の権力にのみ懐疑的で、『50年に1度』の安倍政権以外はそんなに横暴ではないはずだ、安倍さえ変われば良くなる、という発想があるように思えます。これでは反安倍を語る特に自称リベラル勢力は、見たいものしか見ないwishful thinkingです。権力者は自分の権力を突如縛るようになるほど非合理的ではありません。
いい人が権力者になれば良くても悪い人だとダメ、というのならそれは『人の支配』です。どんな人がなっても権力統制できるルールを制度化しなければなりません。弁護士としての日々の業務でもそうですが、法律家としては自分のつくった契約書で『こうも読めます。ああも読めます。書いてないからできます』と、決めてあることを潜脱(法律用語で、禁止されている手段以外の手段を用いて法の規制を免れること)されたら失格なんですよ。自分の作った契約書の文言で紛争を生んだとき、人の生命や全財産を失わせてしまうかもしれない、全身の血の気が引きます。法律も憲法もそうなんです。そして、『憲法と現実が乖離している』ならば、これを近づけるオプションに憲法自体の改正という手段が選択肢から落ちているのが不思議です。現実を変えるための憲法改正も選択肢として考えるべきではないでしょうか」
2019年通常国会での改憲発議も論理的にはありえる
安倍改憲がなくなっても、権力を縛る改憲は必要
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