更新日:2019年10月18日 21:32
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立憲民主党内で山尾志桜里氏の「立憲的改憲」は浮いているのか? 倉持麟太郎氏に聞く

 2018年の12月10日に閉幕した臨時国会では、喧々諤々の議論を呼んだ入管法、水道法の改正は成立した。しかし、この臨時国会での大きな焦点のひとつだった「自民党による改憲4項目の提示」は、ついになされなかった。すべての局面で見えてくるのは、本来国会でなされるべき議論がされていない、という絶望的な状況だ。  例えば、入管法の衆院での審議時間は15時間45分と過去の重要法案に比べても大幅に短く、そのうち2時間45分は野党が欠席したために「空回し」と呼ばれる「何の議論もされてない」時間が含まれている。憲法審査会の開催は衆参含めてたったの1回で、しかも「職権による開催」という異例の手段が使われ、たったの2分足らずで散会した。 「国会はもう、完璧に死にましたね」  そう語るのは、弁護士の倉持麟太郎氏だ。倉持氏は立憲民主党の山尾志桜里氏の政策顧問を務め、また12月12日に『ゴーマニズム宣言 2nd Season 1巻』を上梓した漫画家・小林よしのり氏が主催する「ゴー宣道場」の師範として「立憲的改憲」の必要性を説いてきた。

立憲民主党の枝野幸男代表(右)と対話する倉持麟太郎氏(2018年5月3日、東京都目黒区で開催された「ゴー宣道場」にて撮影)

「国会での質問の場というのは、かつては野党の議員が与党と議論をして言質を取り、審議している法案や制度などを『よりよいものにする場』でした。ところが、現在は野党議員が質問をしても政府・与党の議員はまったく反論もしてこないし、答えも言わない。まったく議論の場になっていないんです」  むしろテレビ番組での議論のほうが、国会よりもマシだ、と倉持氏は言う。 「テレビ番組の場でなら、例えば山尾議員が(自民党の憲法改正推進本部長である)下村博文さんに『下村さん、ちょっとそれは違うんじゃないですか?』とやれば、答えが返ってくる。でも、国会の質問の場というのは今や、完全に形式だけ。現場に行けばわかります。あの弛緩した雰囲気、これは皆さんに体感してもらいたい。与党に議席数があることによって、権力行使の節度がまったくなく、濫用されています」

では、立憲民主党内では議論はなされているのか?

 ただ、野党、特に野党第1党である立憲民主党内での議論はどうなっているのだろう、と疑問に思ってしまうことが多いのも事実だ。というのも、立憲民主党は2017年12月に「憲法に関する当面の考え方」を発表し、「いわゆる護憲と改憲の二元論とは異なる、『立憲的憲法議論』を基本スタンスとする」と明記したうえで、「安保法制の違憲性」「自衛隊加憲論への反対姿勢」「知る権利などの議論」などを列挙し、「日本国憲法を一切改定しないという立場は採らない」と宣言している(2018年7月19日の改訂版でも同様)。  そして、2018年5月には「ゴー宣道場」に枝野幸男代表が登壇し、「立憲民主党に教条主義的護憲派はいません」と断言したうえで、立憲民主党の憲法調査会事務局長である山尾志桜里氏を前に「ほぼ憲法論については山尾さんが言うことと私が言うことは一緒だと思っていただいていい」とまで言っている。

「ゴー宣道場」で発言する立憲民主党の枝野幸男代表(2018年5月3日、東京都目黒区にて撮影)

 その後、山尾氏は8月に「立憲的改憲」についての憲法9条改正試案を発表。これはごく簡単にまとめてしまうと「自衛権を含めた権力統制規範を規定し、侵略戦争をさせないようにする」という権力の暴走を縛るための条文案だ(山尾氏の立憲的改憲は9条の改正だけではなく、憲法裁判所の設立など立憲主義を徹底させるための多岐にわたるアイデアがあるが、この稿では省略する)。そして、山尾氏はこの「試案」を提示したうえで、ことあるごとに「議論をしていくことが必要」と「ゴー宣道場」や各地の憲法集会などで訴えている。  ところが、11月9日の『朝日新聞』の記事によれば、「立憲幹部は記者団に対し『憲法審? そんなのあったっけ?』と突き放した」という。確かに枝野氏も5月の「ゴー宣道場」で、「ただ、政治論として今、立憲的改憲論を高らかに党として打ち上げると、それは安倍さんの思うつぼじゃないですか?」とも語っており、戦略的な対応なのかもしれないが、この「立憲幹部」の発言もまた、議論の場としての国会を軽視しているように思えてならない。  このような立憲民主党の現状に対しては、山尾氏と倉持氏を応援する小林よしのり氏も最近の『ゴーマニズム宣言』(『週刊SPA!』連載中)で「単なる反対しか言わない万年野党の中で、『野党の一番』を死守したいだけの政党なら、国民が失望するのは当然だ。立憲民主党は『立憲主義』の政党であり、『立憲的改憲』を提起しなければ存在意義はゼロなのだ!」と檄を飛ばしている。このことを倉持氏にぶつけると、意外な答えが返ってきた。
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