音曲漫才から講談まで…道玄坂で「イロモノ」が寄席初心者をも魅了
続いては、三味線の音がロフト9に響き渡る。柳家小菊による粋曲(すいきょく)だ。三味線を弾き語りながら、江戸情緒溢れる小唄や端唄、女心をうたった都々逸を披露してくれた。三味線の音色が「これが寄席か」というムードを高めてくれるのはもちろん、小菊師匠の歌声と和服姿の美しさたるや……。客席には若い女性客の姿も見られたが、小菊師匠の「艶」に喰い入っていた。男性陣は言うまでもないだろう。
そして最後は近年ブームになりつつある講談。気鋭の講談師、旭堂南湖師匠が「曲馬団の女」を披露してくれた。高座に置かれた釈台を張り扇で叩きながら、驚愕のストーリーを描いていく。その話術は尋常でなく、口から出てくる情景がダイレクトに脳裏に投影される。 終戦間際を舞台に、香典泥棒に入った女性の人生を時におかしく、時に迫力満点に伝える姿に観客も思わず前屈みになっていく。詳しい内容は是非寄席に足を運んで自分の耳で確かめてほしいが、コレ実は本当にあった話。講談の多くは実話ベースなのだ。
当日は観客席にラッパーも来ていたが、講談のリズムに目を見張っていた。
こうして笑いに満ちた一晩はあっという間に終了。菅野氏が語っていたとおり、「寄席ならではのグルーヴ」を感じることができた。寄席というとハードルの高いイメージがあるが、初体験の筆者でも大満足! 特に「面白いことを言ってやった!」という「ドヤ感」のないのが心地いい。「また江戸の恋の歌が聴きたいな……」と再び寄席に足を運ぶことを誓ったのだった。
<取材・文/林 泰人 撮影/林 紘輝>
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