更新日:2022年12月30日 10:04
ライフ

“才能”はアルゴリズムで判定できるか? 作家志望者に給料を払う出版社が誕生

売れる作品は理詰めで作れるか?

 『the song machine:inside the hit factory』の著者ジョン・シーブルック氏は、そのようにして出来た曲をこう形容している。<いまのヒット曲は、工業製品みたいに鼻を突く匂いがするのだ。確かに子供のころに聞いたポップスを思い起こすのだけど、昔みたいな素朴な甘さとは違う。その刺激をたとえるならMDMAをまぶしたウォッカ味のキャンディといったところだろうか。>(p.5 筆者訳)  文学と音楽では事情が異なるし、De Montfort社が創作活動にもここまでの合理性を求めるかは分からないが、売れる作品を理詰めで作っていく副作用には、こうした弊害も想定しておく必要がありそうだ。  それでも、経済的な不安がなく創作に集中できる環境は、デメリットよりもメリットの方が大きいと言えるだろう。デ・モントフォート氏は、それなりの地位を確立できた作家には5年から10年単位での長期投資もいとわないと語っている。  まだ動き出したばかりの、De Montfort社の“ベストセラー作家選別システム”。それは文学の味方となるのか、はたまた新たな困難となるのか。今後を楽しみにしたい。 ※New publisher plans to offer budding authors £24,000 salary(The Guardian) <TEXT/音楽批評・石黒隆之>
音楽批評の他、スポーツ、エンタメ、政治について執筆。『新潮』『ユリイカ』等に音楽評論を寄稿。『Number』等でスポーツ取材の経験もあり。Twitter: @TakayukiIshigu4
1
2