更新日:2019年08月30日 19:01
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労働基準法が適用されない…潜水艦の乗組員は超絶ブラック

 航海中の潜水艦乗組員は陽の光すらない深海にいます。上陸した時でないと陽の光のある日常生活はありません。狭い艦内という過酷な環境から出た時くらいはゆっくり自宅で休んでもらう配慮が必要なはずです。何十日も陽のあたらない狭い場所から帰ってきてもまとまった休みがないなら、潜水艦乗組員は人生を奪われてしまいます。まだ、日が当たる場所にいることができるだけ、収監された囚人のほうがマシです。  潜水艦乗組員に2カ月間の休日日数は5日間しなかなかったと聞いたことがあります。正月やお盆の休日も多くて4日、少ないときは2日という事もあるようです。これでは休みがあっても、疲れ果てて眠るだけです。定期修理でドック入渠中に運が良ければ1週間程度の休みが唯一の休養です。「代休とって旅行へ行きたいです」な~んてことは申し出ることすら憚る世界です。  働き方改革では休日をきちんと与えるべきということですが潜水艦乗組員も人間です。休養は必要だと思います。  この春、久々の入港期間中に乗組員達の子供の入園、入学の日があり、この日だけは代休を取らせてくれとみんなで代休申請を求め、認められたこともありました。普段、家族には寂しい思いばかりさせている乗組員達もこの日くらいは家族団らんの時間を作り、子供の成長を祝いたかったことでしょう。しかし、その代休は潜水艦の行動上の理由で返上になってしまったそうです。お祝いをするためにスーツや晴れ着を出して家族が集まっていた中で一人職場へ向かうお父さんの背中は寂しかったでしょう。「自衛官のお子さんは入学式もお父さん仕事を休めないの? 可哀想ね」と言われちゃいます。  米国の原子力潜水艦などはゴールドとブルーという2セットのクルーをもっていて、上陸すれば航海して帰ってきた疲れた隊員は長い休暇に入る事ができ、待機して休暇を過ごしていた別のクルーが乗り込むという完全交代制をとっているそうです。効率性と持久性を兼ね備える米軍は乗組員の健康維持は重要な要素だと考え、せっかく適性をクリアし、技術を取得した潜水艦乗組員たちを使い潰すようなやり方はしないのです。自衛隊は気合いと根性で現状を乗り切ろうとしています。国防の要所にも働き方改革が必要なのではないでしょうか?  潜水艦せきりゅうが5月24日におとり弾を誤射した事件がありました。ヒューマンエラーなのか機器の誤作動なのか具体的な調査がなされるのでしょうが、その背後に長時間労働の影響がなかったか気になるところです。長時間労働は体だけでなくメンタルにも影響がでます。ぜひその点も含めて労働環境の調査と改善をしてほしいものです。<文/小笠原理恵>
おがさわら・りえ◎国防ジャーナリスト、自衛官守る会代表。著書に『自衛隊員は基地のトイレットペーパーを「自腹」で買う』(扶桑社新書)。『月刊Hanada』『正論』『WiLL』『夕刊フジ』等にも寄稿する。雅号・静苑。@riekabot


自衛隊員は基地のトイレットペーパーを「自腹」で買う

日本の安全保障を担う自衛隊員が、理不尽な環境で日々の激務に耐え忍んでいる……

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