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『不死身の特攻兵』の記事が広告だけで炎上…読まずに叩く人たち<鴻上尚史>

― 連載「ドン・キホーテのピアス」<文/鴻上尚史> ―  ある雑誌から『不死身の特攻兵 軍神はなぜ上官に反抗したか』(講談社現代新書)の取材を受けました。 ドン・キホーテのピアス 言いたいことを明確にするために、あえて雑誌の名前は書きませんが、その広告がサンケイ新聞に出ました。 「祖国のために戦い抜いた凄い男たちがいた! 不死身の日本軍人は語る」というタイトルでした。  雑誌がそもそも右翼的なスタンスで、いかにもの特集でサンケイ新聞の広告ということで、左翼的な人達がネットで炎上祭りを始めました。  僕がそもそも取材を受けたのは、じつは、その雑誌が右翼的な人達が好む内容のものだから、という理由が大きいです。  『不死身の特攻兵』を読んでもらった人は分かると思いますが、理不尽な命令に右翼も左翼もありません。死に物狂いの訓練をしていたベテランパイロットに、ただただキャンペーンのために体当たりを命ずるというのは、右翼的な愛国心情とは全然違います。  飛行機で突っ込むと揚力によって、直接爆弾を落とした場合より、速度はほぼ半分になります。爆弾の艦船に対する破壊力は、高さ×速度ですから、体当たりする方が破壊力が落ちるということをベテランパイロット達はみんな知っていました。  それは、特攻が「命令」か「志願」か、という論争を決着させる重要な要素です。高度な技術者であるパイロットが、攻撃力が半減する方法を自ら選ぶはずがないのです。  というようなことを、僕はサヨクが大嫌いで、アジア・太平洋戦争を大東亜戦争と呼ぶ人達にも知ってもらいたいと思いました。  どうも、僕のパブリック・イメージは「左翼・リベラル」に近いようで、『不死身の特攻兵』が出た時も、あきらかに内容を読まないまま、(または他人の酷評を鵜呑みにして)攻撃するコメントがいくつかありました。批判する多くの人のツイッターのアイコンには、日の丸が貼りつけられていました。僕は「読んでもらったら、分かるのになあ」と嘆息しました。
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本連載をまとめた「ドン・キホーテのピアス」第17巻。鴻上による、この国のゆるやかな、でも確実な変化の記録

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