甲子園に熱視線を送る「校歌マニア」たち。注目校歌 TOP3は?
―[[灼熱の甲子園]観戦のツボ]―
現在、100年目の激闘を繰り広げている甲子園。甲子園といえば、個性的な野球部員たちやブラスバンドによる応援歌も魅力のひとつだ。近年は斬新な振り付けや、お馴染みの名曲がSNSを賑わせることも珍しくない。
しかし、実はその陰で熱狂的なファンが多いのが校歌。鼻息荒く、「校歌斉唱をぼーっと観ていたらダメです!」と語るのは、“校歌マニア”のライター・渡辺敏樹氏だ。
「今でこそ2回の表裏に両校の校歌が流れますが、‘98年までは試合後の勝利校だけ。『この学校がついに初出場か。どんな校歌だろう』と楽しみにしていても負けたら一巻の終わりでした」
現在は歌詞や曲も、一部は各学校のHPや動画サービスで確認できるが、それまでは現地で録音。学校に問い合わせてテープを集めるマニアまでいたというから頭が下がる。
「また、同じ校歌でも春は学校の持ち込み音源、夏は朝日放送が制作したものなので、まったく音が違うんです。何度も出場している強豪校などは、新規録音するケースもあるので、聴き逃せませんよ」
なんとも奥が深い校歌の世界だが、初心者向けの聴きどころは?
「まずは各地の風土が脳裏に浮かび上がる、山や川を歌った詞です。また、スクールカラーなどの色をうまく取り入れた技巧なども注目してほしい。校歌は難しい古語が入っていることも多く、過去の歴史に思いを馳せながら聴けるのも魅力。徳島県の鳴門高校は、あまりに歴史が長く、校歌の作曲者が不詳なぐらいです。最近は英語詞入りの校歌も増えていますが、必然性もなく、ただカッコつけて英語を入れるのはいただけませんね」
マニアを惹きつけてやまない校歌。耳を傾け、各地の風土を思い浮かべれば、猛暑の甲子園でも爽やかな風に包まれることができるかも!?
<注目校歌 TOP3>
・金足農業(秋田)
日本文学者・近藤忠義が「霜しろく 土こそ凍れ」と、農業の過酷さを巧みに描く。「農業の尊さをかみしめてほしい」(渡辺氏)
・佐久長聖(長野)
前橋育英など、多くの校歌を手がけた大家・草野心平の歌詞に注目。「千曲川 うねうねうねる」など独特の表現が冴え渡る
・慶應(北神奈川)
校歌とされる「慶應義塾高等学校の歌」も存在するが、塾歌が歌われる。校歌・社歌など1000曲以上を手がけた信時潔が作曲
<珍校歌 TOP3>
・白山(三重)
校歌マニアの渡辺氏をして、「いったいどんな曲なのか歌詞しか情報がない」という謎多き校歌。甲子園の地でついにベールを脱ぐ
・東海大星翔(熊本)
コアな野球ファンの間では広く知られているが、実は東海大学付属校は校歌のメロディがすべて同じ。三拍子のワルツが珍しい
・済美(愛媛)
ポップ調のメロディに「『やれば出来る』は魔法の合いことば」という歌詞が乗る明るい学園歌。以前、女子校であった名残だそうだ
【渡辺敏樹氏】
’64年、山梨県生まれ。’85年よりライター活動。著書に『校歌の大甲子園史』(地球丸)、『ふるさとの甲子園ヒーロー』(徳間書店)など
取材・文/林泰人 撮影/渡辺秀之
― [灼熱の甲子園]観戦のツボ ―ライター・編集者。日本人の父、ポーランド人の母を持つ。日本語、英語、ポーランド語のトライリンガルで西武ライオンズファン
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