サウナにありがちな、せめぎ合い。おっさんの頭から香りしアロマ――patoの「おっさんは二度死ぬ」<第75話>
―[おっさんは二度死ぬ]―
昭和は過ぎ、平成も終わり、時代はもう令和。かつて権勢を誇った“おっさん”は、もういない。かといって、エアポートで自撮りを投稿したり、ちょっと気持ちを込めて長いLINEを送ったり、港区ではしゃぐことも許されない。おっさんであること自体が、逃れられない咎なのか。おっさんは一体、何回死ぬべきなのか――伝説のテキストサイト管理人patoが、その狂気の筆致と異端の文才で綴る連載、スタート!
【第75話】誰がロウリュするのか
皆さんは「ロウリュ」をご存じだろうか。
これはサウナの本場フィンランドに伝わる伝統的な入浴法のひとつであり、カンカンに加熱されているサウナストーンに水をかけて水蒸気を発生させ、体感温度を上げて発汗を促す効果があるとされるものだ。また、水の中にアロマオイルなどを混ぜることにより、ほのかな香りによってリラックス効果が得られたりするのが特徴だ。
関東ではそう多くは見かけられないものの、関西を中心にかなり活発に行われている「ロウリュ」、実際にやってみるとかなり良いもので、うおーと蒸し暑さが増してサウナ効果が高まるし、ベロベロと発汗してくる。おまけにアロマオイルのほのかな香りがサウナ中に充満し、最高のサウナクライマックスを迎えみんながハッピーになるのだ。未体験の方は是非とも体験して欲しい。
さて、そんな「ロウリュ」であるが、昨今ではその「ロウリュ」用のアロマ水がサウナ内に用意されており、自分でいい感じにサウナストーンにかけなさい、という「セルフロウリュ」と呼ばれるサービスも増えてきた。ちょっと水蒸気が足りないな、という時は自分でいくらでも追いロウリュできるのでかなり満足度が高くなるわけだ。そして、今回はそのセルフロウリュにまつわるお話だ。
そのサウナは本格的サウナという触れ込みで先日オープンしたばかりのサウナだった。ちょっとサウナには一家言持ってるぞという一流のサウナーたちが最高のサウナと絶賛する設備を誇っており、僕自身もそれを体験することを楽しみにしていた。おまけにその「セルフロウリュ」というサービスがあるというので、ロウリュしまくるぞーとかなり意気込んでいたのだ。
ただ、実際に行ってみると、その一流のサウナは一流だけにかなりの人気を誇っており、さらには最近では若者中心にサウナブームが到来しているらしく、とんでもない混みようだった。
サウナ内が混雑しているとかそんなレベルではなく、浴場が混雑しているとかそんなレベルでもなく、脱衣所が混雑しているとかそんなレベルでもない。それ以前の問題で、靴箱の段階で混んでいて靴箱待ちの行列ができていた。どれだけ人気なんだよ。
こりゃまいったな、さすがにセルフロウリュどころの騒ぎじゃないぞと恐れたのだけど、なんとか深夜なのか朝方なのか分からないような深い時間を狙うことで比較的すいている状態で突入することができた。さすがにこんな時間になると人が少ない。
浴場に入り、体を清めてサウナに向かう。まずはセリフロウリュを備えていない普通のサウナに入る。さすが一流のサウナーたちが絶賛するサウナだ。温度感がすばらしい。こりゃあこのあとのセルフロウリュサウナも期待できるぞ、とワクワクしてきた。
僕はだいたいサウナに12分間入り、その後、水風呂に20秒突入、その後5分の外気浴をルーチンとして3セットやるようにしているのだけど、この温度感のサウナなら12分はきつい、10分くらいが限界か、と思われた時だった。
テキストサイト管理人。初代管理サイト「Numeri」で発表した悪質業者や援助交際女子高生と対峙する「対決シリーズ」が話題となり、以降さまざまな媒体に寄稿。発表する記事のほとんどで伝説的バズを生み出す。本連載と同名の処女作「おっさんは二度死ぬ」(扶桑社刊)が発売中。3月28日に、自身の文章術を綴った「文章で伝えるときにいちばん大切なものは、感情である 読みたくなる文章の書き方29の掟(アスコム)」が発売。twitter(@pato_numeri)
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