忖度するライターと暴走するYouTuber
ライターとユーチューバーの立場の違いについて言及する木曽さん
木曽崇:ただね、パチンコライターのポジションの人はまだいいんですけど、有名YouTuberが来店イベントをやるっていうのは、違うだろうと思うんですよ。彼ら本業のYouTubeがあるうえで来店イベントをやってるだけですから、別に無茶やったってなんにも怖くない。別にダメならそこから引き上げるだけで、YouTuberという本職があるかぎり、仕事はなくならないんだもん。
POKKA吉田:俺はそういうYouTuberに対して、あんまり毛嫌いしていない。パチンコライターの来店イベントが減っていったのは、ライター側の問題だと思うんですよ。たとえばCSのパチンコ専門チャンネルだとか、ギャンブルチャンネルのモンドTVで太く仕事をもらってる人や、必勝ガイド、攻略マガジン、必勝本のライターたちは、自分が関係している会社の方針を忖度するじゃない。そもそもそういったメディアで露出してるからこそ、来店イベントにも呼ばれるわけでしょ? ほんなら行儀よくなっていきますけど、そうなったときに集客力のあるライターなんてほんのひと握りしかいないんですよ。その点、知名度はなくても、「この店は出ますよ!」と下品に案内できるYouTuberが現れたら、やっぱり客は集まるんやろなって思います。
木曽崇:YouTuberは強いよね。彼らは個人事業主だからなにかに忖度することもないし、リスクを取れる。確かに見てる側からすれば面白いとは思うよ。「なんだこの店、出ねえぞバカヤロー」なんていう語り口も含めてね。だけど、僕はすげー毛嫌いしてる(笑)。
POKKA吉田:俺の立場なら、「お前ら業界の将来とか考えずにカネをかっさらうだけかっさらって無理になったら撤退するようなヤツが上からものをしゃべんな」って怒るべきところだし、木曽さんは「や、でもそういうの稼げるんだからいいじゃないですか……」って言いそうなんだけど、不思議なことに逆なのよ(笑)。俺の考え方でいうと、カネ出すパチンコ屋がいちばん悪いんで。YouTuberがガチでボランティアで、自分のYouTubeのコンテンツだけのために店のOKももらわずにいくつかの店に行って映像を撮ってるっていうんだったら、パチンコ屋のせいじゃないけど。カネ払ってんねやったら、パチンコ屋が悪いよ、そんなん。
木曽崇:もちろん、法律上は悪いのはお店でしかないんですけど、逆にパチンコ店のマルハンなんかは、去年の夏にシバターさんと大揉めしましたね。いつも彼は、自分が来店イベントをするお店に対しては、当たり前のように高設定交渉をするんだと公言しているんですが、マルハンは彼の要求を断ったらしい。俺様が店に行くのに高設定ができないとはとんでもねえ店だ、という論調で語ってましたよ。むしろ受け入れなかったと言われたことで、マルハンの業界における名誉は保たれたんだけどね(笑)。
──でもそれ、裏を返したら、これまでシバターさんを呼んで来店イベントをやったホールっていうのは、みんなシバターさんからの高設定交渉を飲んだってことになりますよね。
POKKA吉田:ただ、そういうことは、シバターが初めてやりだしたわけじゃなくて、いろんな連中が最初はやってたりするわけ。今、業界に根付いちゃって、業界側に忖度してる攻略誌の関係者とかも、もともと同じようなことをやってたのがたくさんいるのよ。それで儲けて所帯を大きくして、業界側に擦り寄って、広告協議会にも入り、今はええ顔してるわけね。「ウチはちゃんとやりますよ」みたいな。
木曽崇:そう考えると、今現役で業界を騒がせている人がいなくなっても、たぶん誰かがまたやるだけなので、変わらないですよね。
この問題、まだまだ長引きそうである。
【POKKA吉田】
ぱちんこジャーナリスト。パチンコ業界紙『シークエンス』の発行人・編集長。近著に『
パチンコが本当になくなる日』(扶桑社)などがある。メーカーが主催するセミナーで講師も務めている。 Twitter
@POKKAYOSHIDA
【木曽崇】
国際カジノ研究所所長。日本では数少ないカジノ産業の専門研究者。近著は『
「夜遊び」の経済学 世界が注目する「ナイトタイムエコノミー」』(’17年、光文社新書) Twitter
@takashikiso
<構成/勝SPA!取材班>
SPA!が運営する日刊SPA!内のギャンブル情報サイト「
勝SPA!(かちすぱ)」の取材班。Twitter(
@kspa_official)