『美味しんぼ』因縁の親子料理バトルに終止符。次なるターゲットは環境問題!?
福岡ソフトバンクの「あぶさん」こと景浦安武が現役引退。そのニュースは新聞の社会面にも載った。20年、30年と続くマンガは、もはや単なるフィクションじゃない。が、あまりに長くてフォローしきれないのもまた事実。そんな長寿マンガの「今」を一挙ご紹介!
『美味しんぼ』
作・雁屋哲 画・花咲アキラ 「ビッグコミックスピリッツ」(小学館)にて連載中
’83年連載開始
【作品解説】
東西新聞文化部の山岡士郎はぐうたら社員なれど、食に関する知識と見識は膨大。のちに伴侶となる栗田ゆう子とともに「究極のメニュー」作りを担当する。ライバル関係にある帝都新聞社は、山岡の実父で、美食倶楽部を主宰する海原雄山に「至高のメニュー」作りを依頼。一躍ブームとなった本格グルメマンガ。
因縁の親子料理バトルに終止符。次なるターゲットは環境問題!?
「連載開始早々始まった山岡と雄山の親子対決。一方で、山岡・栗田の元には諸問題を抱えた人々が駆け込み、彼らはそのすべてを料理で解決。料理の数だけ物語があるんだと感心しました」(山脇氏)
その後、山岡と栗田は婚約を発表。”披露宴で究極・至高のメニューを発表し、連載終了か?”と思われたが、審査員の要請でその後も究極対至高の対決は続行。
「対決を続けるにしても、親子ゲンカのほうは、孫もできたことだし、さすがにいつまでもやってられない(笑)。物語は必然的に和解へと向かいます」(山脇氏)
メニュー作りの後継者を選んだ山岡と雄山は、集大成とでもいうべき最後の親子対決を敢行。そのテーマは、”どれだけ相手を喜ばせることができるか”だった。
「勝負の結果は引き分け。実はこの対決、2人を和解させるために、すべて後ろで栗田さんが糸を引いていたんですよ。女ってすごいですよね(笑)」(同)
“父を乗り越えてこそ、父は息子を認める”と話していた雄山は、この対決の後、山岡と極上のワインを酌み交わす。その静かな和解劇は、一般紙でも報道されたほど。
「究極対至高の対決は、後継者に移りながらも続行中。ここへきてテーマはダム問題、築地移転問題など、社会派の色を帯びてきました。長寿連載ともなると、テーマも深化するようです」(同)
【山脇麻生氏】
ライター&編集者。元マンガ誌編集長。本誌や『朝日新聞』などにマンガ評を寄稿。現在、2009年度マンガランキング本の原稿執筆中
― 大長寿マンガの[今こうなってる事典]【10】 ―
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