JAZZKEIRINは競輪の車番色にちなんだ創作うどんが豊富に並ぶ
競輪界の1年を締めくくるビッグレース、KEIRINグランプリ。普段は競輪などまるでやらない人でもグランプリだけは“別腹”という人も大勢いるだろう。ボートも競馬もパチンコもやってしまう“雑食”の記者だが、KEIRINグランプリに行くと人の多さに思わず溜め息が漏れることもしばしば。だから、競輪ファンとたまたま出合うと思わず手を握りしめたくなることも、これまたしばしばある。
そんな“貴重な?”競輪ファンが集まる店として有名な店が東京は杉並、下高井戸にある。その名も
「JAZZKEIRIN」だ。JAZZと競輪を愛する店主がやっていると思った方、それは3分の2正解。JAZZKEIRINの店主はさらにうどんも愛しており、この店は
ジャズとうどんと競輪が楽しめる店として、競輪好きだけでなく、ジャズ好き&うどん好きからも愛される店なのである。店を取り仕切る栂野眞二氏に話を聞いた。
奥が「黒」カレーうどん、手前が「赤」ぶっかけ(夏季限定)。黒カレーうどんにかかる黒いスジは黒ごまペースト、赤ぶっかけは唐辛子をつけこんだ出汁により辛ウマとなっている
競輪はわからなさすぎたからハマった
――競輪との馴れ初めを聞きたいと思います。やはり、いろんなギャンブルをやった最終地点が競輪だったのでしょうか?
栂野:地方競馬に何度か行ったことはあるんだけど、中央競馬に行ったことはつい最近までなかった。実は店に来る若い競輪ファンの中には競馬やるヤツが多いので、一昨年、初めて東京競馬場のダービーに行ったんですよ。一回中央競馬に行ってみたいと思って(笑)。だから、いろんな公営競技やって行き着いたッテワケじゃないんですよ。競輪との出会いは、たまたまフラッと行った京王閣競輪。
まったくもって何をやってるのかわからなかったし、一応専門紙を買ったけど見方もよくわかんない。とにかくわかんないことだらけ。まわりのオヤジの話を聞いても専門用語ばかりでやっぱりわかんない。しか
も選手名を“音読み”でしか呼ばないっていう不思議な世界……でしょ?
(編注:昔の出走表にはふりがながなかったため、昔の競輪オヤジは選手の名前を音読みに固定して決めつけていた)
レジ上には全国の地元競輪専門紙のタイトルロゴを集めた額縁が。店主がうどん屋を開く前に収集したもの。こういった競輪にまつわるものが多く店内に存在する
――そんな不思議な世界に魅了されてしまったと。
栂野:とにかくわからないことばっか。年齢の話をせず何期かの話をする。なんで期が大事なのかわからなかったし、レースが始まっても行けだの引けだの叫んで興奮してる理由もわからなかった。今でも最初に行ったときのことは憶えているけど、今の1センターのところが敢闘門(※選手入場口)だったんだけど、当時は敢闘門の上に客が入れたんだよ。その客がレースが始まった最初の周回のとき。まだ
レースが始まったばかりなのにすごい怒られてる選手がいて。バカヤローとか(笑)。今思えば、逃げると思った選手が初手で前を取ってしまって、一旦引いてからじゃないと逃げられないような状況を作っていたことにキレてたんじゃないかって。で、
回ってくるごとに怒られてる。すげえ不思議だった。
全国を走る選手も京王閣など近くに来た際に立ち寄る。競輪選手のサインで店内は溢れている
――謎解きに時間がかかることを楽しめるかどうかですかねえ。
栂野:そうそう、逆に
わからなすぎたからハマったんだと思う。むしろ少しでも分かっちゃうようなものだったら『ああ、競輪ってこういうもんか』と思って帰ったと思うけど、全然わかんなかったから、『これはちょっと通わないといかんな』と。30年くらい前、当時だとちょうど今の自分、50歳くらいの壮年というか、そういう世代の客が多くて、本当に脂の乗り切ったオヤジが金網掴んで叫んでるんだから。あんなものなかなか見ないわけですよ。その辺のガキじゃなくて、イイ年こいた40~50代のオヤジがマックスで叫んでるっていうのはそうそう見る光景じゃない(笑)