他人への異常なイライラは発達障害が原因だった――光武克の「発達障害BARにようこそ」
「20代の僕は、今とは比べられないほど、他人に攻撃的だったんですよ。間違っているものはどんな相手であろうと『間違っている』と言いましたし、それが先輩であろうと関係なかったです(笑)」
思い返してみると、僕のこういう気質って本当にASDの特性そのままだなって思います。今でも「公平」でないことは絶対に許せないですし(笑)、昔はこれをキツイ性格だって思っていましたけど、発達障害の特性だと思うようになってから、ちょっと付き合いやすくなったように思います。
さて、荒木さんのお返事にもどりましょうか。
荒木「たしかに、光武さん落ち着いた雰囲気ですもんね。昔、性格がきつかったとは思えないほど」
光武「そうなんですよ。昔の僕を知る人間は、今の僕のことを『菩薩系』って言ったりします。菩薩だと修行中じゃないかっていう突っ込みを一応入れておきましたけど(笑)」
荒木「ははは、如来の道は遠そうですね」
光武「まあそれくらい攻撃性が強かったんですよ。戦闘民族、過激派、皇帝、カリスマ……いろいろな言葉で形容されていましたね」
荒木「まったく想像できないです」
光武「そうだと思いますよ。今はその気質が表に出てくるのは稀です。ずっと笑えなかったんですよ。いつも怒っていたように思います。フェアだって思えない社会、不公平な対応をされても気付かないで生活する人々、そしてその人たちを食い物にしているずるがしこい資本主義。そのすべてにイライラさせられていたんですね。今思うと、中二病的で恥ずかしいですけど(笑)」
荒木「もうそれは病気では?(笑)」
光武「ええ、病気だったと思います。当時は診断や診察を受けることはなかったんですけど、間違いなく双極性障害の症状が出ていたように思います。でも…、その結果、周りから誰もいなくなっちゃったんですよ」
荒木「………」
光武「当時は自分が発達障害の特性を持っていること、そんな自覚もなかったものですから、不正義を感じて無視することはどうしてもできなかったんですね。そしてその感覚はみんな持っているだけだと思っていました。持たないのは学びが足りないからだと。だからもっと勉強しようとしない周りの姿に、いっそうイライラしてしまった」
荒木「………」
光武「周りから人がいなくなると、助けてくれる人はいっそう減ります。今ならそういった協力者なしに生きることが不可能だと分かるので、生きづらさをより強く感じるようになったんです。そうなるともう悪循環ですよね。生きづらさを与える社会にイライラして、周りに攻撃的な態度を取り、また友人は去っていく。そういう時期に妻との関係も冷え切ってしまったように思います」
荒木「なるほど、私と一緒ですね……」

(みつたけ・すぐる) 発達障害バー「The BRATs(ブラッツ)」のマスター。昼間は予備校のフリー講師として働く傍ら、‘17年、高田馬場に同店をオープン。’18年6月からは渋谷に移転して営業中。発達障害に関する講演やトークショーにも出演する。店舗HP(brats.shopinfo.jp) ツイッターアカウント「@bar_brats」
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